2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K00246
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
永吉 秀司 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (40461842)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 文化醸成 / 日本画材 / 仏教壁画 / 壁画制作 / ローコスト支持体 / 文化財保護 / 地域文化 / 文化継承 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は前年度までの実践研究の検証結果を踏まえ、弘長寺本殿東側面の3面の壁画制作を研究成果物として完成させた。 本殿東側面の3壁面は、西側の3壁面と対になっている壁面で、創建当時から漆喰仕立てであった壁面にローコスト支持体を活用した、脱着可能なパネル壁面に新たな創作壁画として「弘長寺来迎図壁画」を創作し、本寺の文化的資産価値の醸成に寄与するものとしている。 また、基底材の簡易化図るための実践研究としての役割も兼ねており、今回制作した本殿東側壁面に関しては、雲肌麻紙の裏打ちドーサ引きの和紙を使用し、2023制作予定である本殿西側壁面では、土佐麻紙のドーサ引きの紙をローコスト支持体で制作した壁面にステーブル留めすることとし、簡単に支持体、基底材の状態について把握できるよう工夫し、常態展示における経年劣化による違いについて可視化できる調査資料としての役割も担っている。 現在、本殿東側壁面については仮設置し、気候変動における建物の収縮について齟齬が生じないか現在確認調査中であるが、壁面の設置方法についても、本研究主題である①ローコスト、②汎用性、③地域資産の創出という観念の中の①と②に重点を置き、建築資材で量販店で購入できる赤松の胴縁材を活用し、建物への接着剤を使用した固定は取り付け部材にも使用せず、最低限の穿孔で取り付けた状態で経過観察している。 また、これらの研究成果発表の第一段階として、近隣都市の公設美術館である胎内市美術館と胎内市教育委員会の全面的な協力を得ることができ、2023年10月から12月まで『「新令和版弘長寺来迎図展」の世界』という名称で研究成果の発表と作品成果物の展示という内容で、全館を使用し発表するという企画案が承諾され、その準備もあわせて実施している状況にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナウィルス拡大の行動規制により、現地での取材調査がままならない状況で、研究成果物の制作自体が遅延しており、それに関連する文献資料の作成が、ままならない状況にある。 そのため、研究成果物の制作を最優先に考え、研究に従事しているが、昨年、調査研究の主たる地域が集中豪雨の関係で冠水し、その対応に時間を要し、制作進度にも影響が見られた。幸い本研究母体である寺院は冠水を免れたが、側面の崖が崩落し、庫裡の居住スペースとして利用されているスペースが使用不可のなり、制作場所として提供していただいた場所を居住スペースとして活用する必要に見舞われ、その結果制作進度に大きく遅れが生じることとなった。 しかし、2023に胎内市美術館にて『「新令和版弘長寺来迎図展」の世界』という企画展としての研究成果物発表があるため、そちらの制作を最優先として研究を実施している関係で、研究成果物の文献資料としての構成、執筆は大きく遅れを取っている状況にある。 そのため、研究期間の延長申請も視野に入れている状況ある。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度、胎内市教育委員会と胎内市美術館の協力により、『「新令和弘長寺来迎図展」の世界』という企画展を開催し、市民に地域文化醸成の機会として、本研究の効果と意義について広く周知する。 また、研究成果について、今回の展示結果も踏まえ、考察を深められるよう文献資料として本研究内容をまとめ、その発行時期に併せ、2025または2026年に、新潟市博物館「みなとぴあ」の協力をえて、研究成果物の展示も含めた企画展を実施する。 尚、この科研費のきっかけに、本事業は地域住民の協力と要請により、本研究課題として制作した本殿内宮の壁画の他に、寺院内すべての壁面に創作壁画を入れる話に発展しており、そこで描かれた新作も併せて展示することとする。 そのため、文献資料の編纂期間に充分な時間を要し、また、博物館の年間企画状況の都合により、1年間研究期間を延期し、研究の推進方策として希望する。
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Causes of Carryover |
初期研究として、サンプルの必要量が最低限の数量となったことと、前年度購入した物品で、本年度の研究活動が遂行できたため。また、集中豪雨のための水害により研究活動が滞ったため、今年度購入予定だった物品の購入を見送ったため、支出が減少した。 また、研究成果を文献資料として発表することを予定しており、そのための資金として事業費を充当するため。
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Remarks |
研究成果物として、ローコスト支持体6面、弘長寺来迎図壁画東側3壁面を制作する。
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Research Products
(1 results)