2019 Fiscal Year Research-status Report
第二次世界大戦後の日本における科学研究活動と米国外交政策の関係についての歴史研究
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19K00267
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
栗原 岳史 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 研究員 (50622544)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国際関係と科学 / 日米科学協力 / 戦争と科学 / 軍事研究と科学 / 米軍による日本の研究活動への支援 / 米軍の研究開発活動の歴史 / 日本物理学会「決議三」 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の前半は,前年度までに調査と収集を一部行っていた,1960年代に行われた米陸軍から日本の大学への研究資金の提供に関する文書史料の分析を行った.その結果,第二次世界大戦の終結後に,米陸軍が直接の応用目的のない基礎研究から実用的な軍事技術が生み出されることを重視するようになり,米国だけでなく,米国の同盟国全体で基礎研究活動を振興することが米国の安全保障にとって重要であるとみなすようになっていた.本研究では,その間に行われていた米国陸軍内部の議論について,文書史料にもとづいて,その一端を明らかにすることができた.この研究成果を,2019年5月26日に岐阜大学で開催された日本科学史学会の年会において発表した. 2019年度の後半は,これまでにアメリカ国内での調査で入手した文書史料の分析に加え,出版された文献資料やインターネット上で公開されている報告書などの収集や,先行研究の調査を中心に,研究活動を行った.その結果,アイゼンハワー政権からケネディ政権に移る1959年から1960年にかけて,米軍による日本の基礎研究活動への資金提供に関して,米軍と米国務省の間で,どのような分野について資金を提供するのかに関する合意がなされ,ガイドラインが作成されたことを明らかにすることができたが,その経緯については新たに資料調査を行うことが必要だともわかった. これまでの調査にもとづいて,2020年2-3月にかけて,アメリカ国内の国立公文書館や,アイゼンハワー,ケネディ,さらにジョンソンら各大統領のいずれかの図書館の所蔵する日本政府とのやり取りを記した外交文書史料を調査に行く予定であった.しかし,新型コロナウィルスの世界的な流行のため,実施することができなかった.そのため,引き続き,日本国内で実施可能な,出版されや文献資料や,インターネット上で収集できる文書資料の調査を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は先行研究の調査を中心に行い,必要なことをアメリカ国内の国立公文書館などで調査する計画であった.先行研究の調査は順調に進んだが,新型コロナウィルスの世界的な流行のため,調査の必要があると考えたアメリカ国内での調査活動を実施することができなかった.今後,いつ再開できるかも判明しないため,若干の調査の遅れが生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,米国国立公文書館や歴代大統領図書館等が所蔵する文書史料の調査を主要な研究活動としている.しかし,新型コロナウィルスの世界的な流行のため,海外調査全体が停滞しており,今後,いつ研究活動を再開できるか判然としない状況が続いている.そのため,インターネット上でも公開されている資料をできる限り利用することを行う. 2019年度までに実施した本研究と先行研究の調査から,日本の科学研究に対する米軍による研究資金を提供することついて,米軍と米国務省が対立していたことを明らかにしているが,それをさらに発展させるために,米国務省内における国際関係と科学に関する政策の歴史についてもさらに調査することが必要である.国際関係と科学に関する歴史については米議会でも議論されており,その議論のために,国際関係と科学に関する歴史についての報告書などがいくつか作成されて米議会に提出されており,それらがインターネット上でも公開されていることが判明した.今後,このようにインターネット上でも利用できる文書史料や,出版されている文献資料の調査を中心に,研究活動を実施する.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの世界的な感染拡大の影響のため,2020年2月から3月にかけて計画していたアメリカ合衆国内での資料調査活動を行うことができなかった.その分の旅費を翌年度以降に計上する.
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Research Products
(1 results)