2023 Fiscal Year Annual Research Report
精神療法の成立と展開における宗教動態との接点および影響関係の研究
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19K00272
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Research Institution | Japan Healthcare University |
Principal Investigator |
森口 眞衣 日本医療大学, 保健医療学部, 教授 (80528240)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 近代医学 / 伝統医学 / 宗教的精神療法 / スピリチュアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度において得られた研究成果は以下のとおりである。 (1)「科学的医学」と「非科学的体系」分離現象との関係分析:精神医学の成立期である19世紀は、同時に近代の科学的理論や技術が臨床に導入され、従来の医学から「非科学的体系」を分離させて「近代医学」が成立する過渡期でもあった。世界各地で近代医学による公衆衛生環境の標準化は実現したものの、20世紀前半になると医学の専門化・細分化による疾患概念多様化や薬害事例化、倫理的ジレンマなど新たな問題に直面する。問題解決の一手段として近代化以前の医療・医学体系に対する再評価から「伝統医学(Traditional Medicine)」が発展すると、近代医学の枠内に含められない理論や技法の受け皿として機能することとなった。近代医学の成立で分離された「非医学的体系」に含まれていた宗教的医療実践の一部は上記経緯において伝統医学としての地位を獲得している。20世紀前半から中盤にかけて出現した精神療法のうち宗教と関連性をもつものの多くは近代医学と伝統医学を架橋する位置づけとなっており、当該経緯の影響が想定される。 (2)ヨーガの医療化と宗教性の整理分析:20世紀終盤に出現し現在も多様に展開する「マインドフルネス(mindfulness)」では、精神療法として精神科臨床へ導入される際に技法のひとつであったヨーガの「宗教性」が処理されたと位置づけられている。宗教的ヨーガの発生地であるインドでは20世紀に欧米の身体文化の影響を受けて身体的ヨーガの技法が形成されたが、欧米では宗教的ヨーガのもつ精神修養性の特徴からスピリチュアリティに注目が集まる状況が存在しており、マインドフルネスは両者の動態が交差的に接触し流動化する中で成立し発展した可能性が想定される。
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Research Products
(2 results)