2020 Fiscal Year Research-status Report
戦後大阪の夕刊紙・華僑メディアと文学サークル・在日文学
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19K00295
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宇野田 尚哉 大阪大学, 文学研究科, 教授 (50324893)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 夕刊新大阪 / 働く人の詩 / 中村泰 / 国際新聞 / 華文国際 / 在日文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度には,戦後大阪におけるサークル誌運動の起源の1つとなった『夕刊新大阪』「働く人の詩」欄および動乱を基盤とした詩誌『働く人の詩』のその関係資料,とりわけ故中村泰氏旧蔵資料の分析を継続した。なかでも,新日本文学会大阪支部機関誌『大阪文学』およびそれと並行して発行された『大阪文学新聞』の収集・分析に努めた。あわせて,同誌の中心だった須藤和光関係資料も収集・分析した。 また,『国際新聞』の紙面の分析を継続するとともに,同時期に発行されていた他の華僑メディアの収集・分析を継続した。2020年度には,『華文国際』『僑風』などを収集・分析した。 『国際新聞』の紙面の分析は,引き続き1950年代中頃以降の読者投稿欄・学芸欄を中心に行い、在日コリアンの文芸活動との関係の解明に努めた。たとえば,同紙への投稿者の一人に,泉州で日本人の仲間とともにサークル誌『信太山』を発行していた朴順慶氏がいることが判明し,並行して故朴順慶氏旧蔵資料(とりわけ詩誌『信太山』)の分析などを進めた。これまで明らかにしてきた金時鐘,鄭仁ら(当時の大阪の代表的な在日コリアンのサークル誌『ヂンダレ』の主要メンバー)との関係や,日本人と在日二世のサークル詩人が協働した詩誌『詩炎』に加え,さらに多様な在日文学との関係を明らかにした。『国際新聞』には,大村収容所内で発行されていたサークル誌『大村文学』に寄稿していた人物が解放され大阪に戻ったあと受けたインタビューなども掲載されており,さらに多様な連関を明らかにできる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は,COVID-19パンデミックの影響により,国立国会図書館をはじめとする機関が閉館したり利用制限を行なったりしたため,『国際新聞』紙面の分析や,「日本占領関係資料」中の『国際新聞』関係資料の収集・分析に遅れが生じた。この状況に対応するため,マイクロフィルム・マイクロフィッシュといったかたちでの複製の入手につとめ,それに基づく分析を進めつつあるが,予定よりも作業に遅れが生じている。 今後は,2020年度中に入手・整備した資料環境を踏まえ,分析の迅速化を図る
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は,COVID-19パンデミックの影響により,史資料の閲覧・分析に遅れが生じてしまったが,マイクロフィルム・マイクロフィッシュといったかたちでの複製の入手につとめ,史資料の基盤が整備されたので,その分析を本格化し,成果をまとめる。 今年度は,占領軍が戦勝国である中華民国系のメディアであるという独特の性格を持った『国際新聞』をどう見ていたかという点,および,1950年代における華僑系メディア『国際新聞』と在日コリアンとの関係にとくに焦点を絞り,研究をまとめる。
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Causes of Carryover |
2020年度は,COVID19 パンデミックの影響により,参加を予定していた国際会議がキャンセルとなり,国際会議参加旅費として使用することを想定していた額が残額となった。2021年度中に国際会議で研究成果を発表することが可能な状況になったら,国際会議参加旅費として執行する予定である。
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