2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K00300
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Research Institution | Yamaguchi Prefectural University |
Principal Investigator |
菱岡 憲司 山口県立大学, 国際文化学部, 准教授 (10548720)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 小津久足 / 小津桂窓 / 紀行文 / 分野横断 / 雅俗 / 伊勢商人 / 湯浅屋与右衛門 / 雑学庵 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウィルス流行により、各研究機関を訪ねて調査をおこなうことが制限されたが、文献複写や、すでに収集していた画像資料の分析を中心に研究をおこなったことで、かえって小津久足紀行文全46点を見直し、その分析結果をふんだんに利用した単著『大才子 小津久足』(中央公論新社)を、一般の読者をも想定した中公選書の一冊として刊行することができた。研究成果の社会への還元という意味では、当初の計画以上の成果をあげることができたといえる。 また、久足の歌論がうかがえる和文寓話『午夢譚』(天理大学附属天理図書館所蔵)を翻刻し、石水博物館に寄託された小津久足他宛・山本榕室他差出の書簡を整理したうえ、解題を付して翻刻し、『鈴屋学会報』に投稿・採用された。これは、久足が紀行文のなかでも訪ねる、京都の平安読書室と伊勢文化圏の交流をあきらかにする資料であり、本草学を軸とした文化交流についても、さまざまな示唆を与えてくれる。 さらに、国際研究集会「〈紀行〉研究の新展開」において、「小津久足の生業と紀行文」と題して基調講演をおこない、その後、総合討論をおこなった。小津久足の紀行文が、中世紀行なども踏まえた広い視野で検討されることで、紀行文研究の新たな可能性を示すこととなった。 以上のように、申請時とは異なる社会情勢のなか、デジタル資料の活用や、ZOOMなどの遠隔機器を用いた研究会・学会の開催など、不測の事態のなかでも実行可能なことを探ることで、かえってこれまでにないアプローチから、充実した成果をあげることができたといえよう。
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