2023 Fiscal Year Research-status Report
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19K00302
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐藤 道生 慶應義塾大学, 文学部(三田), 名誉教授 (60215853)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 日本漢文学 / 注釈 / 詩序集 / 本朝続文粋 / 中右記部類紙背漢詩集 / 朝野群載 / 千字文 / 幼学書 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、平安後期(11世紀中葉~12世紀末)に成立した主要な漢詩文集『本朝続文粋』『朝野群載』『中右記部類紙背漢詩集』『詩序集』『内宴記』『法性寺殿御集』について、詳細な注釈を施し、その作者(約250名)の伝記を作成することを目的とする。これによって、これまで殆ど手付かずの状態に置かれていた平安後期の漢文学を本格的に研究するための基盤が確立できるものと思われる。平安後期の漢文学の特徴は、日本人が日本文化の独自性に目覚め、一方で中国文化を意識しながらも、脱中国を目指した点にある。上記資料を注釈の対象とした理由は、それらが日本文化の独自性を探る上で極めて価値のあるものと考えたからである。本研究はこのような観点から、平安後期の代表的な作品集でありながら、未だ注釈書の存しない六書について、その注釈および作者伝の作成を行なうのである。 本研究に認められる学術的独自性は①注釈の対象とする書籍に『本朝続文粋』『詩序集』といった駢文(対句仕立ての漢文)の作品集を取り上げる点、②注釈の中で典拠・用例として挙げる漢籍の本文を当時の古写本に求める点、③注釈の姿勢として、作品の本文を出来るだけ作者の伝記に即して読解しようとする点にある。 2023年度は『本朝続文粋』『朝野群載』『中右記部類紙背漢詩集』『詩序集』の訳注作業に従事し、この内『詩序集』の訳註をほぼ終えることができた。『詩序集』の訳註は2024年度中に公刊する予定である。 また訳注の質的向上を図るために、代表的な幼学書である『千字文』及びその注釈書の古写本・古刊本を調査し、その本文・訓点の整理を行なった。『千字文』及びその注釈書の調査結果は2024年度中に公刊する予定である。 尚、本研究の成果として、2023年9月に『日本人の読書 古代・中世の学問を探る』(勉誠社、516頁)を刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
訳注は、一定のレベルを保つために、研究代表者が主催する日本漢学研究会の例会(毎月1度開催)で口頭発表し、修正を施した上で原稿化し、年度末刊行の研究成果報告書に収録することとしてきた。ところが、2023年度は研究代表者の個人的理由(親属の看護・介護)のために研究会の開催を見合わせざるを得なくなり、訳注の原稿化に支障が生じた。2024年度は、この点が解消されると思われるので、研究会例会を再開し、遅れた分を取り戻すことに努めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に当たる2024年度には、『詩序集』の訳註の刊行を行ない、また『朝野群載』巻十三、『中右記部類紙背漢詩集』の訳注を完成させたいと考えている。これらの書の訳注は研究成果報告書に掲載する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度(最終年度)には、本年度までに蓄積した研究成果を報告書2冊に取りまとめ、刊行したいと考えている。1冊は『詩序集』『中右記部類紙背漢詩集』『朝野群載』などの訳注であり、もう1冊は『千字文』の伝本集成である。したがって、次年度に使用するのは、主として研究成果報告書の作成費・発送費、『千字文』伝本を画像化するためのスキャナーの購入費、その画像を取り込むためのパソコンの購入費である。研究成果報告書の刊行は2024年9月と2025年1月を予定し、またスキャナー及びパソコンの購入は2024年5月を予定している。
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