2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K00303
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
細田 明宏 帝京大学, 文学部, 教授 (20412801)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺内 直子 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (10314452)
真鍋 昌賢 北九州市立大学, 文学部, 教授 (50346152)
後藤 静夫 京都市立芸術大学, 日本伝統音楽研究センター, 名誉教授 (50381926)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 浄瑠璃 / 人形操り / 文楽 / 聞き取り調査 / 浪花節 / 舞楽 / 語り / 近代日本 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受け、計画の一部変更を余儀なくされたが、遠隔会議システムを用いるなどして聞き取り調査をおこない、またこれまでの調査結果をもとに学術論文などをまとめた。 代表者の細田は、「一九七〇年代前半の中国地方小都市における文楽公演について」と題する学術論文を発表した。これは山口県光市において、1972年から3年連続でおこなわれた文楽公演をテーマとしたものであり、当時の文楽公演の一端を明らかにするものである。この公演には地元の人形浄瑠璃保存会が関わっているが、当時保存会の会計という要職にあった人物に対する聞き取り調査の結果をもとに考察をおこなった。これらの公演には、分担者の後藤が公演制作の担当者として関わっていたため、後藤氏に対しても聞き取り調査をおこなった。1970年代の文楽地方公演に関する内部資料自体貴重なものであるが、その上に実施側の主要メンバーと制作者の双方に対して聞き取り調査をおこなったものであり、その点で他に例をみないといえるだろう。 細田はまた、HCG(電気情報通信学会ヒューマンコミュニケーショングループ)シンポジウムにおいて、インタラクティブ発表「文楽人形の演技における聴覚情報の影響」(有本泰子・竹内風音との共著)をおこなった。文楽人形遣いが参加する実験をおこない、3人の人形遣いがどのように協調しているかを考察したものである。実験は文楽人形遣いへの聞き取り調査の結果に基づいて計画された。文楽人形の演技において、聴覚情報(浄瑠璃)が果たす役割についての考察をおこなったものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、実演者や制作実務経験者に対する聞き取り調査をおこなうことを、一つの基礎的な作業と位置付けている。ところが当該年度は、新型コロナウィルスの感染が拡大し、実演者に対する新たな聞き取り調査が不可能となった。 そのため遠隔会議システムを用いて研究打ち合わせをおこない、研究計画を一部変更することとした。すなわち、遠隔会議システムで可能な聞き取り調査をおこなうこと、これまでの聞き取り調査の結果の分析を急ぐことである。また、研究計画では視野に入っていなかった近代資料(『弥太夫日記』)の分析も、本研究において有用だという結論に至り、予備的な調査を進めることにした。 以上のように、当初の計画を一部変更し、また当初の計画にはなかった研究をおこなったが、それぞれ十分な成果を上げることができた。よって「おおむね順調に進展している」と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染状況の先行きは不透明であるが、可能な限り速やかに実演者への聞き取り調査を再開させたいと考えている。それが難しい場合は、これまでの聞き取り調査結果をもとに学術論文をまとめる。 文楽の制作実務に関する聞き取り調査は、遠隔会議システムを用いておこなうことができるため、継続して進める予定である。その成果を用いた論文も執筆予定である。 予備的な調査を開始した近代の浄瑠璃資料(『弥太夫日記』)については、全体像がようやくつかめた段階であり、翻刻などの基礎的作業をおこないながら、考察を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大により聞き取り調査の計画を変更したため、交通費および謝金の支出が減少した。当初の計画になかった『弥太夫日記』の研究をおこなったが、まだ予備的な調査の段階であり、それほど費用がかからなかったため残額が発生した。 次年度は、『弥太夫日記』の研究が本格化する見込みであるため、無理なく使用できるものと考えている。
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Research Products
(4 results)