2022 Fiscal Year Research-status Report
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19K00315
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
横溝 博 東北大学, 文学研究科, 教授 (30303449)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 高橋富兄 / 国学者 / 古典注釈 / 住吉物語 / 近代短歌 / 北辰会雑誌 / 旧制四高 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、過年度に調査収集した資料の研究および研究経過の報告のまとめが主たる内容であった。高橋富兄による文学関係の資料である『住吉物語問答』(玉川図書館内 近世史料館蔵)の翻刻を整理したほか、インターネットに公開されている『北辰会雑誌』のバックナンバーを閲覧して、同誌に掲載された高橋富兄執筆の論文および書評の内容について考察を行なった。当該年度の主たる研究(昨年度の拾遺を含む)は当初の計画通りとは言えるが、もう一方の課題である金沢大学に赴いての『北辰会雑誌』等、旧制四高にかかわる資料調査はコロナの影響もあって今年度も実行できな かった。また、高橋富兄編による歌集の検討も未着手なままである。考察のまとめと新たな書誌調査および整理、新資料の発掘等々は、次年度に持ち越さざるをえないこととなった。なお、国内の学会においては、中古文学会秋季大会シンポジウムの内容をまとめ、当研究課題による調査の一部を使用して論文として提出した。また、EAJS国際会議におけるパネル発表を編著『日本古典文学を世界にひらく』(勉誠出版)に掲載するとともに、情報収集に努めた。また、研究成果の一部を取り込んで、小著『王朝物語論考─物語文学の端境期』(勉誠出版)を公刊した。ただしこれは研究成果公開促進費の助成によるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度の主目的である収集資料の研究については、手元にデータがあるため、ほぼ達成できた。しかしながら、かねて予定していた金沢大学での調査、資料収集については、今年度もコロナに留意したため実現することができなかった。高橋富兄の文芸に関する自筆資料や、伝記研究に関わる情報収集が不可欠 であり(高橋富兄の墓所の実地踏査も課題の一つである)、そのためには旧制四高の資料を所蔵する金沢大学での資料収集が欠かせない。これについては、さらに 次年度に持ち越さざるをえない。よって、当該年度については、調査内容の考察と整理という点では実現できたものの、実地踏査については実現できていないことから、「やや遅れている。」と自己評価するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
『住吉物語問答』『枕草子箋』の翻刻および内容に関する研究を充実させ、報告できるようにする。また、『北辰会雑誌』掲載の論考を精査し、高橋富兄の国学者 としての研究や、旧制四高での教授活動などについても調査を進め、高橋富兄の学芸の内容を明らかにする。 とくに、コロナの影響で実現できていない旧制四高に関する資料調査を金沢大学に赴いて実現したい。同時に、近世から幕末・明治にかけての『住吉物語』受容についても継続的に調査を行うものとする。文芸の側面においては、金沢歌壇における高橋富兄の活動について、他の歌人たちとの交流を探索し、情報を収集するなど、伝記研究を補完するために更なる情報収集に努めたい。『詠梅二百一首』をはじめ、金沢における高橋の歌壇活動については、佐佐木信綱をはじめ、同時代の歌人たちとの交流をも視野に入れながら進めていく。なお、学者としての高橋に関しては、古語の語彙・文法にかかわる研究である『語箋』(国立国会図書館蔵・自筆本、同デジタルライブラリーで公開中)の検討に着手したい。次年度も研究推進の方策については、大学機関のコロナ対応の状況を見極めた上で予定を組むなど、調査の実現に向けて前向きに活動したい。
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Causes of Carryover |
国内外での新型コロナウィルス感染症の拡大により、昨年度につづけて、予定していた国内出張、海外出張がすべて取り止めとなり、すべてオンライン開催となったため、旅費が発生しな かった。また県境を跨いでの国内出張も実質困難であったことから、直接経費の内訳としては資料の購入による物品費の支出にとどまり、多くを次年度に持ち越さざるを得ないこととなった。次年度においては、 大学機関におけるコロナ対応の状況を見極めながら、国内での調査、資料収集を実現し、研究成果を報告するために使用を計画するものである。
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Research Products
(3 results)