2022 Fiscal Year Annual Research Report
The research on the legal restrictions against Japan early modern literature
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19K00321
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山本 秀樹 岡山大学, 社会文化科学学域, 教授 (60252409)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本近世文学 / 出版規制 / 吉備津宮縁起 / 吉備津神社 / 御触書集成 / 御仕置例類集 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間全体を通して、新型コロナウイルス感染症に大きく予定を狂わされた研究課題であり、最終年度についても当初計画予定以外の研究成果を出して、本研究課題の研究期間を終えることになった。 単著「『神道大系』所収吉備津神社所蔵吉備津宮縁起二種の成立年代について ―支配者の先祖の記述を避けなければならなかった事例の遡源―」(『岡山大学文学部紀要』75(2022年12月)において、『神道大系』に収録された、備中国吉備津神社の神社縁起三種のうちの二種の成立年代を考定し、その考定の鍵となった縁起の文言の書き変えについて、権力者の意向を忖度した結果であるということを考証して、これまでまったく不明であったそれら二種の縁起の成立年代を天正年間(1573-1592)頃に定めるとともに、そこに江戸時代の出版法の先祖的発想を確認した。 期間全体を通じて実施した研究の成果をふりかえってみれば、江戸時代の日本の出版法制について、少なくとも江戸時代中期までにおいて、幕府が各藩に出版法を通達することはなかったであろうことを推定し、また一方、幕府評定所編『御触書天保集成』に収録されていることにより町触であったと信じられてきた寛政改革時の一法令が実際には発令されていなかったことを証明することを通じて、『御触書集成』だけを信じることの危険性を明らかにし、特に町触集成類との比較考量の必須性を明らかにした。また、その考証の過程において、評定所判例集『御仕置例類集』写本のうちに、長らく用いられてきた従来の活字本で知られていなかった部分がふくまれることを発見し、注意を喚起した。
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