2021 Fiscal Year Research-status Report
成島信遍研究―幕臣文人の事績を通して見る近世中期江戸文壇の特徴―
Project/Area Number |
19K00322
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
久保田 啓一 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 教授 (80186452)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 成島信遍 / 仁木充長 / 江戸冷泉門 / 幕臣文化圏 / 荷田在満 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の中心課題である成島信遍の伝記研究に関しては、「成島信遍年譜稿(二十三)」「成島信遍年譜稿(二十四)」の二本を発表した。延享3年(1746)の終わりから延享4年(1747)の末まで、信遍58歳・59歳の事績を詳細に辿ることができた。吉宗が将軍職を退いて西丸へ移ったことに伴い、近侍する信遍の公務も大幅に減じたが、一方では、押しも押されぬ江戸の幕臣文人として、様々な文章執筆の依頼が殺到するに至った状況をつぶさに知ることができたのは、大きな成果といえる。特に、山内香雪編『名家手簡』六集上所収の信遍書簡の背景を初めて学界に報告できたことを多としたい。 あわせて、信遍に先立って江戸冷泉門の最古参門人として活動した仁木充長の研究「風客仁木充長(三)」、信遍と同時代の和学者で共通の知人も多かった荷田在満の幕臣文化圏における位置を改めて問い直した「江戸幕臣文壇と荷田在満」をも執筆した。特に後者は、土岐善麿の指摘が戦後の学界で顧みられなかったことの指摘とともに、原資料『田藩事実』に当たり直して改めて在満の立場を見定めたもので、今後の在満研究に寄与するところが大きいと自負する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナの感染拡大に振り回された1年であった。東京の代表的な図書館・資料館の調査が非常に困難で、手持ちの資料の整理に基づく論文執筆が研究のすべてといってよかった。 次年度以降の状況の好転を期待するとともに、可能な限り、既知の資料の複写収集等で遅れを挽回したいと念じている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度、2021年度の調査研究の対象が、人口密度の低い長野県佐久市等に限られたため、新資料の発掘等が十分にできなかった。次年度以降は、複写収集に重点を置き、その情報を時間軸に沿って考察するとともに、伝記研究の進捗を図りたい。可能であれば、1年の期間延長を申請することも考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染状況に改善が見られず、東京などへの資料調査旅行が大きく制限されたため、旅費の支出が限られた。次年度以降は複写の請求に主眼を置き、調査収集の不足を補うつもりである。
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Research Products
(4 results)