2022 Fiscal Year Research-status Report
新資料・旧蔵資料による『種蒔く人』主要同人今野賢三の研究
Project/Area Number |
19K00324
|
Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
高橋 秀晴 秋田県立大学, 総合科学教育研究センター, 教授 (40310982)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 今野賢三 / 小牧近江 / 金子洋文 / 種蒔く人 / プロレタリア文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度まで、今野賢三宛て書簡、今野賢三自筆原稿・草稿等の翻刻を中心に研究を進めてきた。2022年度は、雑誌・新聞・切り抜き、雑記・メモ、写真、争議関係書類等を対象に点検・整理・分析を行った。今野賢三の関心や問題意識の在りどころ、日々の行動についてある程度明らかになったが、断片的な情報が殆どであるため、論考としてまとめるには至らなかった。 一方、『種蒔く人』創刊100周年記念事業の実行委員長として、日本社会文学会、秋田県立大学、「種蒔く人」顕彰会の共催による「『種蒔く人』創刊100周年の集い-歴史・現在、そして未来へ-」(2021年10月9日に予定されていたが新型コロナウイルスの感染拡大のために2022年10月8日に延期)の企画、準備、運営、広報に取り組んだ。小森陽一東京大学名誉教授の「メタヒストリーとしての『異国の戦争』」、大和田茂日本社会文学会本理事の「関東大震災で失ったもの―『種蒔く人』、平沢計七などをめぐって」、阿部邦子国際教養大学客員教授の「小牧近江著/藤田嗣治挿画 詩集『詩数篇』(一九一九)を巡って」、北条常久「種蒔く人」顕彰会会長の「『種蒔く人』概説」、という4件の講演により、この雑誌と運動の歴史的、現在的、未来的意味を改めて再認識する場となった。なお、当日の様子は、YouTube(前編https://youtu.be/FQyeHM3y58A/後編https://youtu.be/THLrWuirZ5c)にアップし、不特定多数の視聴に供するようになっている。 今回の「集い」を機に、小牧近江の孫である桐山香苗氏から秋田県立博物館に小牧の肖像画(パリ滞在時に洋画家の正宗得三郎(白鳥の実弟)が描いたもの)が寄託され、併せて、あきた文学資料館に寄託されていた小牧関係資料の全てが寄贈されることにもなった。学会と行政とがタイアップしたことによる具体的成果と考えてよいだろう。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は、雑誌・新聞・切り抜き、雑記・メモ、写真、争議関係書類等を対象に点検・整理・分析を行ったが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、県外における調査活動等は殆どできなかった。そのため、国立国会図書館や日本近代文学館等における資料・文献調査が叶わず、秋田県立図書館、あきた文学資料館、秋田市立土崎図書館等所蔵の今野賢三資料の背景や他の情報との関係性を明らかにするに至らなかった。 実行委員長として関わった『種蒔く人』創刊100周年記念事業(「『種蒔く人』創刊100周年の集い-歴史・現在、そして未来へ-」、2022年10月8日)等については、成功裏に終えることができ、有形無形の成果を得られた反面、企画、準備、運営、広報に膨大な時間と労力をとられ、当初の予定通りに研究を進められなかった。 以上のことから、本研究の進捗状況について、「やや遅れている。」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが2類相当から5類感染症へと変更(2023年5月8日)されたため、過去3年間できないでいた県外調査に着手する。 また、2022年度に取り組んだ雑誌・新聞・切り抜き、雑記・メモ、写真、争議関係書類等について、『文芸戦線』『レフト』『文学評論』等の雑誌掲載文や単行本との突き合わせをすることで今野賢三の文学活動全体における意義を明らかにするつもりである。その上で、本研究の全体を総括し、報告書を作成する。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、県外での取材・調査活動ができなかったことに加え、学会・研究会等がオンライン(併用)開催となったため、旅費等が不要となり支出が激減した。また、10月8日に開催された「『種蒔く人』創刊一〇〇周年の集い-歴史・現在、そして未来へ-」の企画、準備、運営、広報等の業務により、予定していた研究活動が十分にできず、複写費、人件費、謝金等が発生しなかった。 2023年度は、「次年度使用額」により、上記の活動を精力的に行うとともに、秋田県立図書館、あきた文学資料館、秋田市立土崎図書館が所蔵する今野賢三関係資料のアーカイブ化を行う予定である。
|
Research Products
(5 results)