2019 Fiscal Year Research-status Report
人形浄瑠璃における近代以降の伝承の中絶とその復元に関する重点的研究
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19K00326
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
久堀 裕朗 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (50335402)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 人形浄瑠璃 / 文楽 / 淡路人形浄瑠璃 / 義太夫節 / 日本近世文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実施計画に記した通り、以下の4点に取り組み、それぞれについて研究を進めた。 Ⅰ.浄瑠璃本の調査による非文楽系の「中絶した伝承」(上演本文・曲)の発掘:主に南あわじ市淡路人形浄瑠璃資料館所蔵の浄瑠璃本を調査し、基礎データを収集した。特に近代の三味線奏者の朱(三味線譜)の記載された浄瑠璃本について調査し、その情報を収集・整理した。/Ⅱ.劇評記事の調査による「中絶した伝承」(舞台演出)の発掘:研究協力者の助力を得つつ、雑誌『浪花名物 浄瑠璃雑誌』(全425号)の複写を収集し、そこから劇評記事の抽出を開始した。現在、明治期の分について整理しているところである。/Ⅲ.道具帳の調査による「中絶した伝承」(舞台装置)の発掘:Ⅰ・Ⅱを中心に進めたので、Ⅲについてはまとまった調査はまだ行っていないが、浄瑠璃の作品研究を進める中で、道具帳(御霊文楽座道具帳)に関する考察を深めている段階である。/Ⅳ.「中絶した伝承」(Ⅰ~Ⅲにより見出したもの)復活の試行:こちらもまだまとまった作業はしていないが、浄瑠璃『蛭小島武勇問答』の諸本を調査し、その伝承について確認しつつ、復活の可能性について検討している段階である。 以上、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳいずれも研究途中の段階にあるが、今年度まとめた成果としては論文「道頓堀の人形浄瑠璃興行に関する覚え書き(二)―竹本座と金毘羅大芝居のことなど―」(『文学史研究』第60号)がある。人形浄瑠璃の劇場・舞台規模と場所について考察した論文であるが、例えば江戸時代の竹本座と近代の四ツ橋文楽座の舞台規模の違いを明らかにしており、本研究課題とも関わる研究成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画記載の通り、「Ⅰ.浄瑠璃本の調査による非文楽系の「中絶した伝承」(上演本文・曲)の発掘」「Ⅱ.劇評記事の調査による「中絶した伝承」(舞台演出)の発掘」「Ⅲ.道具帳の調査による「中絶した伝承」(舞台装置)の発掘」「Ⅳ.「中絶した伝承」(Ⅰ~Ⅲにより見出したもの)復活の試行」について、それぞれ順調に調査・整理・分析を進めている。 今年度は研究初年度なので、Ⅰ・Ⅱが中心になっており、まだ成果としてまとめたものも少ないが、現在は研究データを収集・整理している段階にあり、その作業は着実に進めている。よって、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の研究実施計画に記した通り、「Ⅰ.浄瑠璃本の調査による非文楽系の「中絶した伝承」(上演本文・曲)の発掘」「Ⅱ.劇評記事の調査による「中絶した伝承」(舞台演出)の発掘」「Ⅲ.道具帳の調査による「中絶した伝承」(舞台装置)の発掘」「Ⅳ.「中絶した伝承」(Ⅰ~Ⅲにより見出したもの)復活の試行」について、それぞれ調査・整理・分析を進めていく予定である。 2020年度はまだ研究期間の前半であるので、Ⅰ・Ⅱの調査を中心に進めていくつもりである。またⅣにおいては、取り組み始めた『蛭小島武勇問答』(淡路に豊澤町太郎師録音の音源が残っている)について、具体的に諸本を比較し、復活上演台本の作成を進めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス流行の影響で、2020年3月に予定していた出張調査を予定通り行うことができなかった。2020年度も引き続き新型コロナウイルスの影響は避けられないが、2020年度後半以降、それまでに行えなかった調査を順次実施するつもりである。
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Research Products
(2 results)