2022 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Naka Kansuke's Works during and Post World War Two.
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19K00329
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
大森 英実 (木内英実) 東京都市大学, 人間科学部, 准教授 (70331501)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中勘助 / 仏教学 / 印度学 / 児童文学 / 俳句 / ジャータカ / マハーバーラタ / 第二次世界大戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
普遍的価値を有する印度学資料及び仏教学資料と関連した2022年度の調査研究結果として以下①②が挙げられる。 ①中勘助の第二次世界大戦前後の創作における人間及び社会批判の視座について「中勘助の仏教童話及び仏教童謡詩におけるJataka等聖典の受容」と題し、日本印度学仏教学会第73回学術大会<於:東京外国語大学(オンライン)>にて2022年9月3日に口頭発表(単独)し『印度學佛教學研究』<71巻2号>日本印度學佛教學会(2023年3月)に単著として発表した。 ②2022年に九州大学岡野潔教授のご教示により典拠資料が「マハーバーラタ」「ヒトーパデーシャ」であると判明した中勘助の第二次世界大戦前後創作詩2編の位置づけについて、「中勘助の戦中・戦後の詩業におけるインド叙事詩『マハーバーラタ』の影響-『涼しき蔭』及び『山がつとはしばみ』を中心に-」と題し日本比較文学会第60回東京支部大会<早稲田大学文学学術院(オンライン)>にて2022年10月15日に口頭発表(単独)をした。 その他、中勘助の第二次世界大戦中に創作が開始された句作について、2021年静岡市に塩田惠氏より寄贈された中勘助直筆句稿を対象にした研究調査を2022年度に行った。その資料は戦中に中勘助が静岡で創作した俳句を記し、1946年4月末、塩田惠氏父君の故塩田章氏(当時、ボルネオ島より復員)に中勘助が手渡したものであった。それについて塩田氏と深い縁のある俳人・新堀邦司氏の協力を仰ぎ、塩田惠氏及び静岡市の許可を取った上で中勘助直筆句稿部分及び故塩田章氏直筆詞書を翻刻、俳句に解題を付し、中勘助文学における当資料の位置づけを調査した。その研究結果を「中勘助の静岡時代の俳句について-塩田章氏旧蔵中勘助直筆句稿『鶴』を中心に-」『東京都市大学人間科学部紀要』<第14号>(2023年2月)pp.1-38にまとめ発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年4月に行われた学科名称変更及びコース制新設等を見越し2022年度に東京都市大学人間科学部における担当授業コマ数が増加した。Covid-19感染状況が収束したことに伴い静岡市への移動制限解除があったものの、上記の理由により、静岡市中勘助文学館における中勘助直筆資料調査を目的とした出張が中々叶わなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
静岡市中勘助文学記念館への出張を定期的に実施可能な研究環境の変化(大学の異動)に伴い、中勘助直筆資料調査を行う。 原典資料の読解に注力できなかったため公刊を見送った上記「研究実績の概要」掲載「中勘助の戦中・戦後の詩業におけるインド叙事詩『マハーバーラタ』の影響-『涼しき蔭』及び『山がつとはしばみ』を中心に-」と題した研究について、公刊を目して調査を継続して行う。 児童文学という形式及び方法を用いて人間・社会批判を行うという中勘助の視座や文学の方法に近似する中勘助と同時代の海外の文学者を発見することができたので、その作家の視座と文学の方法を調査し、超越的文化バイアスという本研究の核心にアプローチする。 2023年度前期に研究成果発表のためのHPを立ち上げる。2023年度中に研究成果発表のシンポジウムを開催したい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は次の3点に起因する。1点目:東京都市大学人間科学部の2023年4月における学科名称変更、コース制設置に伴い研究者が担当する授業数が増加し、静岡市への中勘助直筆資料確認の為の出張が叶わなかったこと、2点目:2023年2月に手術を伴う入院を約2週間しその間、本研究調査が中断したこと、3点目:2023年3月末に東京都市大学人間科学部より駒沢女子大学人間文化学類への異動に伴い、研究室の引っ越しがあったこと。 2023年度使用計画として、次の4点を挙げる。1点目:研究成果を報告するためのHPの立ち上げを8月に行うこと、そこに掲載する原稿の校正及び助言者(専門家)への謝金、IT業務従事者(アルバイト)の雇用が予定される。その流れの中で、紙ベースでの報告書の刊行を2024年1月頃に予定し、それに伴い印刷代が支出される予定である。2点目:前年度に行えなかった中勘助直筆資料確認の為の静岡市中勘助文学記念館への出張を5~12月に実施、それに伴う出張旅費の支出が予定される。3点目:前年度に深く考察ができなかった中勘助の戦中戦後の詩業に影響を与えたであろう「マハーバーラタ」の読解について印度学仏教学の専門家に指導を仰ぎ紀要論文にまとめる。指導のための謝金が発生する予定である。4点目:超越的文化バイアス的事象検証(中勘助と比較する)の為、海外の文学者の資料を購入し調査中である。
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Research Products
(4 results)