2023 Fiscal Year Research-status Report
儀礼における歌掛けの機能的研究―日中間の比較を通して―
Project/Area Number |
19K00336
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
牛 承彪 関西外国語大学, 英語国際学部, 教授 (20460842)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 歌 / 歌掛け / トン族 / マンカイ / 囃し田 / 田植儀礼 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は以下の実地調査を行った。 ①中国貴州省錦屏県平秋鎮石引村の「上桃園」習俗をめぐる調査(期間は2023年8月20日から9月3日)。「上桃園」は旧暦7月10日から7月15日までの期間中、祖先を迎える「七月半」(中元節)行事のなか、脱魂状態になって「桃園」(冥界に近似する異空間)に旅する習俗である。その過程において、冥界へ旅する者はその場にいる者、または冥界の者との間で歌の掛け合いを展開されるが、実質的には歌掛けによって、「桃園」の旅が次から次へと推進される。可能な限り、生態を明らかにし、関係事情を調べた。 ②鹿児島県奄美市龍郷町秋名の「平瀬マンカイ」の調査(期間は2023年9月22日から26日)。「平瀬マンカイ」は豊年祭の期間中、ノロをはじめとした集団が稲霊を招く行事である。この過程で、海辺の「神平瀬」の岩に立つノロ5人と「神童平瀬」の岩に立つ7人の男女の間で歌掛けが展開される。歌掛けによって稲霊が招かれるという構造をなしている。「平瀬マンカイ」と密接な関係を持ち、また同じく稲霊を招く行事である秋名の「ショチョガマ」についても調査を行った。③奄美市笠利町の「節田マンカイ」をめぐる調査(期間は2024年2月9日から12日)。この行事は同じく「マンカイ」という表現を持ち、同じく歌掛けを行うものである。④広島県安芸高田市来原の「原田はやし田」をめぐる調査(期間は2023年5月27・28日)。⑤広島県山県郡千代田町の「壬生の花田植」をめぐる調査(期間は2023年6月2日から6月5日)。この二つは中国地方の「囃し田」と呼ばれる行事で、サンバイと呼ばれる音頭と早乙女との間で歌掛けが展開する。サンバイは田の神の呼称でもあり、田の神と田の神に仕える早乙女との間で展開する歌掛けになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
コロナによる制限が解除され、民俗行事も従来通り行うようになり、現地調査を実施することができた。映像・画像・音声による資料収集を行い、調査内容をめぐってインタビューを行った。またこれらの資料の文字起こし作業も順調に進むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
音声資料の文字起こし作業を続け、最終的には研究成果をまとめて『調査研究報告書』を作成する。
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Causes of Carryover |
理由:コロナウィルスの影響により、実地調査はこの一年間に集中した。それゆえ、文字起こし等の作業は年度内に完成できなくなかった。したがって研究期間を一年間再延長するようになり、残りの作業及び関係の経費は次年度の計画に入れるようになった。 使用計画:残りの経費は、以下にように使用する。①文字起こし作業の謝金として支払う。②『調査研究報告書』の製本費として使用。
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