2023 Fiscal Year Annual Research Report
A Study of Japanese Frontier Poetry Written in Classical Chinese Language from the Late Edo to the Meiji Era
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19K00339
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Research Institution | Hakodate National College of Technology |
Principal Investigator |
泊 功 函館工業高等専門学校, 一般系, 教授 (10390379)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 江戸漢詩 / 北方辺塞詩 / 郷土と漢詩 / 北方警備(蝦夷勤番) |
Outline of Annual Research Achievements |
研究最終年度(令和5年度)は、資料調査の補遺として別海町郷土資料館に残された会津藩士南摩綱紀の書軸を確認するために現地に赴き、当該書軸を含めた関係資料の調査を実施した。綱紀の詩集『環碧楼遺稿』には北方辺塞詩に該当する詩も含まれているが、その書軸には、彼の詩集に再録されていない詩が書かれていたからである。会津藩は幕末期、幕命によって、現在の中標津町・別海町の警備を担務していた。会津警備隊の隊長兼当該地区の代官であった綱紀は、当地でアイヌ語の通辞を務める加賀伝蔵を雇用し、経書をアイヌ語に翻訳し、アイヌの王化に努めたという。その伝蔵が故郷の秋田にいる兄の様子を心配して帰省する際、綱紀は彼の才を称え、これまでの仕事ぶりに謝意を示す「大象伝蔵の其の兄を省みて秋田に帰るを送る」(「大象」は通辞の意)という自詠詩を揮毫した。ただ現地で確かめたところ、稿者の定義するところの北方辺塞詩としての内容を備えていなかったため、本研究成果の中で公表はしないが、別に歴史的意義のある詩内容を持つものなので、本件に関する研究成果については別途公表する予定である。 令和5年度は最終年度であるため、これまでの研究成果をまとめた研究報告を冊子の形で作成し、印刷業者に依頼して100部印刷した。それは研究に御協力いただいた方々、また資料提供に便を図っていただいた各地の図書館などに発送する予定である。 研究全体を通して、先の報告で明らかにした研究成果は以下の通りである。1北方辺塞詩の定義・要件が確定できた(日本漢詩の新カテゴリーの創出)2現行で確認し得る限りの詩を収集し、解読できた(研究プラットフォームの形成)3ただし、当初多数の北方辺塞詩が収集できると思われていた蝦夷勤番藩士の残した文書には、ほとんど北方辺塞詩がのこされていないことがわかった(今後の課題)4北方辺塞詩における詩精神の一部解明(今後の課題)
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