2021 Fiscal Year Research-status Report
近世後期から末期の長崎における異文化融合と他地域への伝播をめぐる学際的研究
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19K00346
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
吉良 史明 長崎大学, 教育学部, 准教授 (50707833)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中島広足 / 木下逸雲 / 青木永章 / 近藤光輔 / 書画帖 / 唐物 / 煎茶 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度もまた、長崎に伝存する資料群の調査を推し進めた。以下、その詳細を記す。 まず昨年度から引き続いて長崎大学附属図書館小西家資料の文献調査ならびに資料撮影を行い、その成果を画像データベースとして公開していくための作業を進めた。小西家資料目録は、一通り完成しており、画像データベース公開に向けて資料の翻字作業も進めている。加えて、原田家から寄託を受けている南画家木下逸雲関連資料の文献調査を進め、目録の作成を8割程度終えた。長崎大学附属図書館小西家資料と合わせて目録化することにより、近世後期長崎文苑の中核に位置した逸雲の文事を検証していく基礎資料となることが期待される。 また、以前に収集していた近世後期長崎関連の紀行作品に関して、諏訪神社大宮司の青木永章『後東路記』、同『亀岡日記』、田島一中『宇都宮日記』、島原藩家老の板倉勝彪『丹波路日記』の翻字を行い、近世後期長崎歌人の執筆した紀行文を集成した資料集の刊行に向けての基礎作業を終えた。 さらに、研究計画書に記載した「近世後期長崎における異文化融合の内実と伝播の模様の解明」に関して、中島広足の舶来趣味の和歌に着目し、広足が来舶趣味の和歌を詠んだことの内実を検証した。結果、長崎における唐物趣味ならびに来舶清人の詩書画をも含む蒐集書画帖の流行があり、長崎の豪商および地役人等の求めに応じて筆を執り、また詠んだものが舶来趣味の広足歌文であったことを明らかにし、近世後期の歌壇をめぐる新たな一面を提示出来たかと思う。近く、学術雑誌に投稿する予定である。 さらにまた、長崎学研究所主催の2021年度長崎学研究発表会に際して、「近世後期長崎における異文化融合の内実――異国趣味とは何か――」と題して発表を行い、舶来趣味の長崎歌人の和歌が詠まれた背景には煎茶の流行が深く関連していることを論証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度もコロナウイルスの流行のために、長崎県外の文献調査を行うことが出来なかった点、悔やまれる。 しかしながら、長崎に伝存する来舶趣味関連の資料群の調査を進めることにより、研究課題である「近世後期長崎における異文化融合の内実」を検証するための基礎資料の収集は順調に進んでいる。また、収集した資料群をもとに研究発表を行い、さらに複数の論攷の執筆を進めており、異文化融合の内実を明らかにした研究成果をあげている。 以上の理由から、当初の計画との順序こそ変わっているものの、研究全体の進捗状況は計画以上に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度においては、長崎県外の資料の文献調査を積極的に行い、研究のさらなる進展に向けての基礎資料の整備に努めたい。具体的には、広瀬先賢文庫および咸宜園、また熊本県立大学寄託村川家資料、鈴鹿市郷土資料室蔵磯部長恒関連資料等を計画している。 また、収集した資料群に基づき、複数の論攷の執筆を行う。具体的には、広足と桂園派との関係を検証したもの、鎮懐石碑の成立と神功皇后伝説にまつわるもの、広足の歌論における「まこと」と歌風を検証した論攷を計画している。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの流行により県外への文献調査が実施できなかったことにより、次年度使用額が生じた。令和3年度以前に計画していた文献調査は、令和4年度以降実施することにより、旅費等に使用する。
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Research Products
(3 results)