2019 Fiscal Year Research-status Report
日本近現代文学におけるメロドラマ的想像力の展開に関する多角的研究
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19K00350
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
木戸 雄一 大妻女子大学, 文学部, 教授 (30390587)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
五味渕 典嗣 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (10433707)
横濱 雄二 甲南女子大学, 文学部, 准教授 (40582705)
副田 賢二 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 人文社会科学群, 教授 (40545795)
高橋 修 共立女子短期大学, その他部局等, 教授 (90179474)
渡邊 英理 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (50633567)
森本 智子 甲南女子大学, 文学部, 講師 (90803601)
大島 丈志 文教大学, 教育学部, 教授 (90383215)
大橋 崇行 東海学園大学, 人文学部, 准教授 (00708597)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | メロドラマ / 戦争記憶 / メディア / ジェンダー / アダプテーション / 情動 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、3つの研究班が研究をステップアップさせていくための土台作りを意識した活動を行った。 1.学際的な対話と交流。公開研究会(2020年2月2日)で、日本におけるメロドラマ映画研究を主導する河野真理江氏に、フィルム・スタディーズにおけるメロドラマ研究の歴史と方法的な特質について講演していただいた。大島丈志が『輪るピングドラム』と宮澤賢治のテクストについて、大橋崇行が明治期におけるメロドラマ概念の受容と三遊亭円朝『名人競』との関わりについて報告した。映画・演劇研究者の参加があり、学際的な対話と交流の基礎を固めることができた。 2.「メロドラマ的想像力」に関する議論の蓄積。2019年8月25-27日、岡山県倉敷市・香川県小豆島にて合宿研究会を開催、山路敦史が大岡昇平『武蔵野夫人』の空間表象とメロドラマとの関係について、副田賢二が週刊誌『サンデー毎日』の表象空間の「メロドラマ的想像力」とジェンダー化の様相について報告した。また、横溝正史、壺井栄の地域における記憶と観光資源化に関する調査を実施、メロドラマにおける「空間」と「移動」に関する議論を重ねた。 3.個別研究の進展。渡邊英理は、中上健次・中上紀・崎山多美のテクストから「メロドラマ的想像力」の諸要素としての大衆性・脱領域性・情動性を再評価する研究を進めた。副田賢二は、大庭さち子のテクストを手がかりに、メディア空間としての週刊誌が要請する物語的想像力のありようを考察した。五味渕典嗣は、久米正雄『白蘭の歌』を題材に、小説テクストに刻まれた「メロドラマ的想像力」と同時代の言説との葛藤・交渉について議論した。横濱雄二は、野坂昭如と高畑勲の『火垂るの墓』について、物語の舞台となった土地の歴史/記憶との比較から、物語内容とは別のレベルでアニメーションによる表象が観客の想像力を「メロドラマ的」に駆り立てて行くメカニズムについて検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していた研究活動はほぼ予定通りに進めることができた。プロジェクト立ち上げ当初からの課題だった、「メロドラマ的想像力」をめぐる学際的・国際的な研究ネットワークの構築という面でも、一定の目処をつけることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本プロジェクトにおいては、インターネット上で専用のコミュニケーションスペースを確保することで、研究上の情報交換を日常的に行ってきた。2020年度は、こうした実績を活用し、オンラインでの研究会や講演会の開催も視野に入れた活動を行う。また、今後の新型コロナウイルスの感染状況によっては、当初予定していた未公刊資料の発掘や言説資料の網羅的調査、メロドラマ物語と地域表象に関するフィールドワークが困難になる可能性もある。その場合は、「メロドラマ的想像力」をめぐる理論的検討や、日本近代文学におけるメロドラマ研究の歴史的検証を先行させるなど、柔軟かつ機動的に研究活動を推進していく予定である。
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Causes of Carryover |
一部の分担者が研究資料の調査収集が十分に行えず、年度末までに複写費および旅費を予定通り執行できなかった。2020年度はコロナウィルス流行のため、遠隔地での調査が履行できない可能性があり、代わりにメロドラマ関連のデータベース作成に注力し、また研究会等の開催をオンライン環境で開催することを模索する。その際必要な文献資料および設備の購入に次年度使用額を使う予定である。
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Research Products
(12 results)