2021 Fiscal Year Research-status Report
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19K00351
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
一戸 渉 慶應義塾大学, 斯道文庫(三田), 准教授 (20597736)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 和学 / 国学 / 橋本経亮 / 上田秋成 / 文館詞林 / 佚存書 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度に公表した本研究課題と関連する業績は展示図録1点、分担執筆の著書2点、論文2篇である。 展示図録『蒐められた古―江戸の日本学―』は、丸善・丸の内本店4階ギャラリーにおいて開催した同題の展示の図録だが、当該展示では前年度に公表した『橋本経亮旧蔵 香果遺珍目録』での成果を踏まえつつそれを発展させる形で、近世後期の和学者橋本経亮の諸活動をその旧蔵資料に基づいて跡づけ、また同時代の好古や復古といった潮流の中に位置付けようとしたものである。「香果遺珍本『文館詞林』解題と影印」は矢島明希子との共著論文で、この経亮が収集した唐代成立の佚存書『文館詞林』の新出摸写本を紹介し、そこに馬融「上林頌」の一部など従来未知の佚文が含まれていることを考証し、また経亮が当該摸本を作成した経緯について跡づけたものである。 関連して、慶應義塾大学論語疏研究会編『慶應義塾図書館蔵 論語疏巻六 慶應義塾大学附属研究所斯道文庫蔵 論語義疏 影印と解題研究』に掲載した「橋本経亮編『遠年紙譜』所収「皇侃義疏料紙」について」では、香果遺珍の中から見出された経亮編の紙譜に、伝世最古とされる慶應義塾図書館蔵『論語疏』巻六零巻の一部であったと見られる紙片が貼られていることについて報告したもの。「上田秋成と橋本経亮」では、経亮が秋成に入門した時期が天明7年末以前であることを香果遺珍中の資料に即して述べたものである。 國學院大學日本文化研究所編『歴史で読む国学』では第五章の「安永・天明期 多様化する国学」及び第六章「寛政期 復古の諸相」を担当し、18世紀後半の国学史を叙述する中で、多様な潮流の中から復古への志向が幕府や朝廷及びその周辺の知識人層にひろく認められることを述べ、そのことと当該時期の国学の隆盛との関係性について記述した。 本年度は当該研究課題に関わり中津市歴史博物館(大分県中津市)への出張調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属機関における事務担当の役職の業務対応のため本研究に費やすことの可能な時間が当初の見込みを下回ったこと、また前年度より続く新型コロナウィルスの感染拡大のために大学等の収蔵機関が外部者の閲覧を制限しているため出張調査の機会が大幅に失われたことから、進捗に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染拡大の影響が長引いており、大学図書館を中心に外部者の閲覧を制限している期間が少なくない。調査可能な機関を選定するとともに、関連資料の購入や過去に収集した資料の分析を行って研究を進めてゆくこととしたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大の影響が長引いており、大学図書館を中心に外部者の閲覧を制限する機関が少なくない。そのために当初予定していた調査活動が円滑に実施できなかったことが次年度使用額が発生した理由である。今後、状況を見つつ可能な範囲で調査を実施し、また関連資料の現物や複写の購入などに充当したい考えであるが2022年が最終年度であることから、補助事業期間の延長も検討している。
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Research Products
(5 results)