2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K00352
|
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
山本 章博 上智大学, 文学部, 教授 (70733955)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 浄土教 / 南無阿弥陀仏 / 和歌 / 空也上人 / 慈円 / 法然上人 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の成果としては、仏教文学会・和歌文学会合同シンポジウム「中世釈教歌の可能性」(2023年12月)における口頭発表「南無阿弥陀仏と和歌」が挙げられる。この発表は、浄土教和歌史の研究の総括として、平安から鎌倉にかけての「南無阿弥陀仏」あるいは「阿弥陀仏」を詠み込んだ歌の系譜をたどり、浄土教和歌の歴史的展開を見通したものである。空也上人の「ひとたびも南無阿弥陀仏といふ人の蓮の上にのぼらぬはなし」をその始発に位置付け、その後、選子内親王、俊頼、教長、西行、慈円、家隆などの作品をたどり、中でも画期的作品として『有房集』の七首、慈円の「厭離欣求百首」等を取り上げ、法然上人、一遍上人への系譜を描いた。特に、慈円においては、和歌を詠む行為と念仏修行とが極めて近いものとして認識されている。浄土教との関連で和歌を考えることは、和歌を詠む行為の意味を問うことでもある。この口頭発表は、成稿化し、次年度『仏教文学』(仏教文学会)に掲載される予定である。 一方、個別の歌人では引き続き慈円に焦点を当て、慈円の釈教歌の中に法華信仰と阿弥陀信仰がどのように見られ、どのように共存しているのかを分析している。この分析は、釈教歌において、なぜ法華経の歌と浄土教の歌の二つの大きな流れができたのか、という大きな問題につながると考えられる。また、法然の和歌についての資料を収集し、昨年度に集成した一遍上人の和歌とともに、注釈的研究を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで歌人の個別研究を主としていたが、上記の口頭発表「南無阿弥陀仏と和歌」において、浄土教和歌の歴史的展開を広く捉えることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、慈円の和歌の分析を中核に据えたい。慈円については、その著作聖教類が整理されてきているが、これらとの関連を視野に入れながら、宗教活動の中での和歌の位置付けについて分析を進めたい。上記の口頭発表において、慈円以前を中心に展開をまとめたが、慈円以降についてもまとめていきたい。
|
Causes of Carryover |
研究期間中に国際学会に参加する予定であったが、コロナ禍により延期が続いていた。次年度、国際学会に参加することとなり、これに支出する予定である。
|