2021 Fiscal Year Research-status Report
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19K00354
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
植田 麦 明治大学, 政治経済学部, 専任准教授 (30511539)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本書紀 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は依然としてコロナ禍の影響が大きく、研究の進展ははかばかしいものではなかった。本研究が計画していたのは、第一に文献調査、第二に調査に基づく分析、第三に分析に基づく考察である。このうち、現地調査が許される状況になかったため、第二・第三の研究計画も見直しを必要とされたのが痛手であった。 そのため、既存の資料をもとにデータの精査を行うこととなった。進展としては、玉屋本『日本書紀』巻第五における中臣祓に付された祭文について、幾分か手掛かりとなりうる資料を発見したことが挙げられる。現時点ではただちに発表しうる水準の分析にはいたっていないが、次年度(2022年度)に文献調査が可能となった場合は、すみやかに関連資料についての調査を行いたい。 また、『日本書紀』関連資料である『古事記』の検討を行った結果、新たな知見を得ることができたため、2021年度中に論文として公刊した。これは、『古事記』において重要な役割を果たす須佐之男命の在りようについての論考である。従来、須佐之男命は暴虐神と英雄神との二面性を有するものとして考えられ、その「矛盾」ともいえる造形について様々な論考がすすめられてきた。報告者はこの二面性が天神(あまつかみ)としての転身によるものであることを前提に、これまでは等閑視されてきた大気津比売神殺害条にその契機があることを明らかにした。 さらに、本申請課題とは直接の関係をもたないが、いくつか計量国語学の手法に基づく論考を公開した。この手法は今後、『日本書紀』の諸本系統を定量的に示す可能性があると報告者は考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
上述のとおり、本研究計画の基盤は資料の所蔵先における文献調査である。2021年度は移動の不自由と調査先の受け入れ不可が重なり、一切の文献調査を行うことができなかった。これは、研究計画を立案した時点ではまったく予想をしていなかった事態であり、従って研究計画に遅滞をきたしたことも不可避であると思量する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も依然としてコロナ禍の収束はみえないものの、社会的に規制は緩和されつつある。そのため、文献調査が可能となることを期待する。上述のとおり、既存資料の再検討により、新たに調査するべき資料の見通しが立ったため、研究計画立案時とは別の資料調査を行いたい。
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Causes of Carryover |
当該年度はコロナ禍のため、移動が大きく制限された。そのため、遠方での文献調査を行うことができなかった。また、協力者を雇用してのデータ整備等も不可能であった。
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