2019 Fiscal Year Research-status Report
佐太神社文書和歌関係資料を対象とした江戸期出雲歌壇の人的交流に関する研究
Project/Area Number |
19K00360
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Research Institution | Hijiyama University |
Principal Investigator |
山崎 真克 比治山大学, 現代文化学部, 教授 (10342544)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 佐太神社 / 出雲歌壇 / 人的交流 / 出雲文化圏 / データベース |
Outline of Annual Research Achievements |
松江市文書調査報告書第2集『松江市内寺社史料調査目録-平成22年度~平成25年度-』(松江市教育委員会 2014.3)「佐太神社文書」に加え、昭和38年(1963)8月の国学院大学図書館・同日本文化研究所によるマイクロフィルム撮影に関連して整備された『佐太神社文書撮影仮目録』(佐太神社 1978.2)、および蘆田耕一氏他編『重要文化財 佐太神社-佐太神社の総合的研究-』(鹿島町立歴史民俗資料館 1997.3)所載の「「佐太神社史料」目録」(佐太神社先代宮司朝山晧氏の未発表原稿による)等に基づき、佐太神社文書の書誌情報をデータベース化する作業を行った。これは、最終的に既に構築した「江戸後期出雲歌壇を構成する歌人データベース」と統合することを目指すものである。 データベース化した資料のうち、佐太神社宮司その他神職の人々による和歌詠草を中心に、出雲歌壇での活動状況と人的交流の実態がうかがわれるものについて調査を行うため、情報を整理した。朝山(勝部)芳房をはじめとする歴代の佐太神社宮司の和歌詠草や、歴代松江藩主および明珠庵釣月、百忍庵小豆沢常悦など歌壇の指導者的存在との交流実態を示す資料を中心とすることとした。 佐太神社先代宮司朝山晧氏(1895~1957)の出雲国に関する研究業績には、松江藩主と佐太神社宮司との和歌を通じた密接な交流についてなど、出雲歌壇での活動状況や人的交流の実態を探る上で重要な情報が含まれる。1988年度特別展図録『風土記を解く-歴史学者朝山晧の眼』(鹿島町立歴史民俗資料館 1988.10)「朝山晧年譜」などに基づきながら氏の研究業績を調査・収集することで、佐太神社文書の調査・収集作業の補完とした。また、朝山晧氏が書写に関わっている椎の本花叔編『雲陽人物誌』本文についても検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始時に既に収集が完了していた『松江市内寺社史料調査目録-平成22年度~平成25年度-』などの資料を使用したため、佐太神社文書の書誌情報をデータベース化する作業をスムーズに進めることができた。 佐太神社先代宮司朝山晧氏(1895~1957)の出雲国に関する研究業績については、1988年度特別展図録『風土記を解く-歴史学者朝山晧の眼』(鹿島町立歴史民俗資料館 1988.10)「朝山晧年譜」を基本資料とすることで、網羅的に整理することができた。また、椎の本花叔自筆資料である島根県立図書館蔵『雲陽人物誌』と、いずれも朝山晧氏書写本を転写した島根大学附属図書館桑原文庫蔵本・大阪市立大学森文庫蔵本の2本との本文異同を確認することで、『雲陽人物誌』本文の位置付けが明確となった。
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Strategy for Future Research Activity |
椎の本花叔編『雲陽人物誌』について、既に私家版として刊行している島根県立図書館蔵本と、朝山晧氏書写本・島根大学附属図書館桑原文庫蔵本・大阪市立大学森文庫蔵本との本文異同を整理し、草稿本に対し加筆・修正された最終本文を確定する予定である。 また、佐太神社宮司その他神職の人々による和歌詠草を中心に、出雲歌壇での活動状況がうかがわれる資料の内容分析を行う。朝山(勝部)芳房『百首和歌』をはじめ佐太神社宮司と歴代松江藩主および歌壇の指導者的存在との交流実態を示す資料や、佐太神社および周辺地域の神職、松江藩家老、伯耆国人や僧、京・大阪在住の著名歌人の歌が含まれる『神始言吹草』(正徳元年〈1711〉6月刊)等により、出雲歌壇での人的交流の実態を考察する。 松江市文書調査報告書第1集『乙部家等古文書史料調査目録-平成19年度~平成21年度-』「千手院文書」「松江神社所蔵文書」、平成25年特別展『松江藩主松平家の至宝-天下の名物-』(松江歴史館 2013.11)にみられる松江藩主家に関わる古典籍等、佐太神社文書以外のさまざまな年代の江戸期出雲歌壇の活動状況がうかがえる資料の調査・資料収集および内容分析を行い、出雲文化圏における佐太神社文書の位置付けを図る。 本研究で扱う資料の全体像の把握と、絞り込んだ資料の個別の分析、また佐太神社文書以外の資料も検討材料に加え、既に構築した「江戸後期出雲歌壇を構成する歌人データベース」と照らし合わせて、出雲歌壇での活動状況と人的交流の実態の解明を行う。
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Causes of Carryover |
佐太神社文書を中心とした出雲歌壇に関連する資料の調査・収集を主な目的として、江戸期の全国的な歌壇状況に関する影印・翻刻資料および和歌関係研究図書、国内旅費などを計上していた。今年度は、既に収集を行っていた資料を用いたデータベース化の作業や、情報の整理、朝山晧氏書写本『雲陽人物誌』の本文検討を優先的に進めた。また、新型コロナウィルス感染症拡大の影響もあり、情報収集を目的とした学会・シンポジウム等への参加が関東方面1回にとどまったため、次年度使用額が生じた。 次年度は、新型コロナウィルス感染症の収束状況を確認しつつ、通常授業期間の週末や通常授業終了後の長期休業期間を利用するなどして、佐太神社文書を中心とした出雲歌壇に関連する資料の調査・収集、関係学会・研究会などへの参加による情報収集を行うとともに、未だ不足している江戸期の全国的な歌壇状況などについての先行研究調査のため、和歌・俳諧関係研究図書を購入する。
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