2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K00361
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
天野 聡一 九州産業大学, 国際文化学部, 准教授 (50596418)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 江戸派 / 和文小説 / 古典注釈 / 古典受容 / 擬古物語 / 江戸時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目にあたる令和元年度は、主に江戸派の国学者が創作した和文小説について、①目録の作成、②作品分析、③文学史的把握という3つのアプローチから研究を進めた。 ①については、作者別に項目を立て、(1)作者の略歴、(2)和文小説の解題を中心に入力を進めた。具体的には、加藤千蔭、村田春海、清水浜臣、片岡寛光、秋山光彪、朝田由豆伎といった国学者の項目を作成した。②については、1作者につき1・2作品を選んで「翻刻文」を作成し、段落毎に注釈を含めた「読解」を記述していった。「翻刻文」は原文の平仮名を適宜漢字に改めつつ、原文の表記をルビで示すなど、正確さと読みやすさの両面に配慮して作成した。「読解」は内容理解の助けになるよう意識し、要点を押さえて簡潔に記述するよう努めた。村田春海「春の山ぶみ」、清水浜臣「虫めづる詞」、片岡寛光「軒もる月」、秋山光彪「車中雪」について記述した。③については、①と②の成果を踏まえ、現段階での所感をノートにまとめた。 一方、基礎研究として、和文小説創作の背景にある古典研究・古典受容についても研究を行った。令和元年度は、荒木田麗女の『月のゆくえ』に認められ、和文小説の素材ともなった藤原定家と式子内親王の恋愛伝承について分析を行い、その成果を論文としてまとめた。 以上に加えて、研究の過程で得られた有益なインターネット上の情報を、ウェブサイト「日本文学InternetGuide」に随時反映させていった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①と②については、ある程度予期していたものの、やはり膨大な時間が取られた。これについては、記述の仕方を工夫することによって、徐々に効率的に進捗できるようになってきた。 予期していなかった事態としては、新型コロナの影響がある。年明け以降はこのために出張ができず、春休みに実施しようとしていた資料収集と研究会参加がかなわなかった。 一方、2018年度に刊行した拙著『近世和文小説の研究』について、今年度3本の書評が発表された。いずれも貴重な批評であり、今後の研究に資するところが大きい。同書は日本古典文学学術賞を受賞したが、その際にも大変有益な批評をいただいた。また、定家と式子の恋愛伝承については論文として発表し、研究者たちからの様々な意見をうかがうことができた。これらは予想以上の収穫だった。 以上から、全体としておおむね順調に進展しているとみなすことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
①と②は当初はエクセルで作成していたが、何度かの試行錯誤の上、いずれも一太郎ファイルでの記述が最も適していることが分かった。スタイルが定まったことで、来年度以降の研究の効率化が見込まれる。 基礎研究としては、定家と式子の受容に加え、『続落久保物語』の作者と目される五井蘭洲の古典注釈について論文化を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響により、1-3月に計画していた出張が取りやめになったため、次年度使用額が生じた。今後はコロナの影響次第だが、資料収集の調査旅行を追加する、それが難しい場合は新たに文献を購入するか複写するかして、資料の収集につとめたい。
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Research Products
(2 results)