2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K00381
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
芳村 弘道 立命館大学, 文学部, 教授 (50330006)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富 嘉吟 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (00802696)
萩原 正樹 立命館大学, 文学部, 教授 (20250532)
CHAN CHIENHUI 立命館大学, 立命館アジア・日本研究機構, 研究員 (60834512) [Withdrawn]
住吉 朋彦 慶應義塾大学, 斯道文庫(三田), 教授 (80327668)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 朝鮮渡り唐本 / 東アジア漢籍交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
「朝鮮渡り唐本(朝鮮を経由して日本にもたらされた中国の刊写本)」は、東アジア(日中韓)の漢籍交流に重要な役割を果たしたにも拘わらず、その総合的な調査、研究が行われていなかった。そこで当研究の初年度においては、その現存情況の基礎的な所在目録を、OPACや全国漢籍データーべース、CiNiiなどの電子情報、各所蔵機関の藏書目録を参考利用して作成した。 その結果220余部を確認でき、蔵書印などから「朝鮮渡り唐本」が多数もたらされた時期として、第一に近世初の文禄・慶長の役を契機とし、第二には近代の日韓併合以後であることを明確にし得た。第一期は筑波大学など所蔵の「養安院藏書(曲直瀬正琳)」印をもつ一群を主とし、第二期は石川武美記念図書館の徳富蘇峰の旧蔵本(115部)が代表となっている。 国内の調査は京都大学人文科学研究所と東京大学総合図書館の蔵本を終えた。前者では明暦元年(1655)の朝鮮通信使の一員であった南龍翼旧蔵の明萬暦版『えん州山人四部稿』が貴重で、後者では17世紀前半の高官趙尚絅の旧蔵本(『四書全解』等)が多いことが注目される。 国外では10月に韓国に赴き、ソウル大学奎章閣・韓国学中央研究院蔵書閣・成均館大学・高麗大学校の集部明版を調査した。蔵書閣において李王室旧蔵本『楚辞評林句解」が幕末の安西雲煙の旧蔵であり、韓国に回帰したこの「朝鮮渡り唐本」を見出し、日本国内だけの調査では不十分なことを知らされた。 20年2月に研究成果報告会を開催、韓国調査本の報告及び高麗大の魯耀翰研究教授「李朝初期唐本輸入概括ー経部を中心に」、慶應義塾大学斯道文庫の住吉朋彦教授「論語句解の伝播についてー朝鮮渡り唐本管見」の研究発表を行った。住吉教授からアメリカに転じた「朝鮮渡り唐本」を紹介され、在外蔵書にも注意を向ける必要性を実感した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
OPACや全国漢籍データーべース、CiNiiなどの電子情報および各所蔵機関の藏書目録を参考利用して「朝鮮渡り唐本」の現存目録の基礎稿を作成したが、こうした情報には遺漏がある。例えばかつて実見した東京都立中央図書館所蔵の明正徳版『白樂天詩集』は、空押し文様淡黄色の表紙をもつ典型的な朝鮮改装本であり、「朝鮮渡り唐本」瞭然たる一本であった。ところが全国漢籍データーべースからの情報には朝鮮改装本であることを示しておらず、実際に閲覧して始めて判かる。こうした例は多々あって、本研究には直接、所藏本を調査することが不可欠である。 19年度においては、電子情報を主として活用し、まず前半期の段階で基礎的な所在目録を作成し、これに基づき、後半期に可能な限り多くの国内蔵書機関を訪れ実際に調査を行うことを計画していた。そこで2月末から3月にかけて、東京方面への調査を準備していたが、新型コロナウィルスの影響で、実施ができなくなった。思いがけない情況になって、後半期の重要な研究が進捗を阻まれた結果になった。
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Strategy for Future Research Activity |
①新型コロナウィルスが収束せず、各所蔵機関の蔵書閲覧が不可能な間は、実査に代わる手段として、インターネット上に公開されている唐本の書影を丹念に検索、閲覧して、書誌情報を収集し、解題の資料としてゆく。 ②上記①同様の検索、閲覧を行い、「朝鮮渡り唐本」を発見し、作成した所在目録稿を増補修正する。 ③これまでに調査しえた「朝鮮渡り唐本」について、解題稿を作成する。 ④緊急事態が緩和されれば、調査の成果および解題稿の内容を検討する研究会を開催する。
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Causes of Carryover |
研究分担者のひとり富嘉吟氏が2020年2月から翌月にかけて計画していた出張調査が進まなかったことにより残額となり、次年度使用額が生じた。 今年度は、国内外の出張調査が困難な状況が続くと見込まれるので、物品費の支出を増額する方法をとりたい。
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Research Products
(13 results)