2019 Fiscal Year Research-status Report
Representations of the Irish Famine in Nineteenth-Century Fiction and Non-Fiction
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19K00454
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
中村 哲子 駒澤大学, 総合教育研究部, 教授 (20237415)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アイルランド / 飢饉 / 19世紀 / 小説 / 旅行記 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の1年目にあたり、19世紀半ばのアイルランドにおける大飢饉を扱った小説と旅行記を中心に、第一次資料となるテキストの収集と整理を行った。アメリカ人による旅行記の一部には、イギリスで発刊された刊本だけでなく北アメリカで発刊されたものもあり、アイルランドだけでなく英国と米国も含め、各種図書館所蔵データを確認しつつ、基本となるデジタル版を中心に整えた。また、第二次資料となる研究書や研究論文の収集も並行して行い、直接的に関係する文献の点数を把握するとともに、より歴史的、文化的、文学的な文脈を把握するために有効な文献情報の整理と一部の資料の入手を図った。 テキスト分析については、主としてアントニー・トロロープの『リッチモンド城』をめぐる飢饉関連描写について検討した。この小説の舞台は南アイルランドのコークの北、マロー近辺とされているが、英国ヨークシャーに現在も維持されているリッチモンド城との類比も指摘されており、英国対アイルランドの政治的確執への視座が重層的に書き込まれている。英国・アイルランド間での移動についても注目できるこの作品において、地域性の問題にも焦点を当てながら、飢饉の描写をアメリカ女性のアセナス・ニコルソンの旅行記との関連で考察した。また、シドニー・オズボーンの旅行記との関連性を指摘する向きもあり、小説と旅行記とのジャンルをまたいだナラティヴについて具体的な事例を提示できるように検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定したようにトロロープのテキスト読解と分析が進まず、研究2年目においても継続して考察する予定である。この作家が1849年から1850年に発表した飢饉についての記事のテキストが入手できないままとなっており、この点も次年度で対処すべきこととして残っている。年度末に予定していた国外での資料収集がかなわない事態となったが、次年度でも海外渡航による研究実施が難しい状況であると判断されるため、可能な方法にて必要文献を入手したり、考察を深めるための方策を模索する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究初年度にて対応できなかった文献収集やテキスト分析・考察を進めるとともに、ウィリアム・カールトンの小説を軸に、関連旅行記との関連性を解明していく予定である。なお、いわゆる1940年代の大飢饉よりも以前に生じた飢饉に関連する記述やナラティヴの意義についても、その重要性が認識されることから、関連情報が的確に得られるよう、さまざまな機会を得る努力をしていきたい。 国外での研究機会を得ることは期待できない状況が続くことから、地道な分析・考察を進めながら、研究期間の後半に先延ばしするべき点を明らかにしつつ、議論の基盤を盤石なものとしていく方向で、研究を推進する。
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Causes of Carryover |
年度末に国外での研究実施を計画していたが、渡航を取りやめたことから旅費の支出分としていた資金が次年度使用額として生じることとなった。今年度入手できなかった文献等について、国外の図書館からその複写を取り寄せるなどの費用として使用することを計画している。
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