2019 Fiscal Year Research-status Report
The Relations between the Notion of Ecriture and the Theory of Enunciation in Barthes, Blanchot, Derrida
Project/Area Number |
19K00513
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
郷原 佳以 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (90529687)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジャック・デリダ / エミール・バンヴェニスト / ロラン・バルト / 発話理論 / 「白い神話」 / 隠喩論 |
Outline of Annual Research Achievements |
バルトやデリダにおけるエクリチュール概念と発話理論の関係を明らかにするという本研究の目的に沿って、令和元年度は主として以下の研究を行った。 (1)まず、1960年代において言語学者エミール・バンヴェニストの発話理論が文学理論家たちによっていかに相矛盾する仕方で受容されたかを整理した。次に、発話理論をエクリチュール論に応用しようとするバルト「書くは自動詞か?」を、1966年のデリダの発言および翌年の『声と現象』での議論と比較検討した。そこで焦点となったのは、「私は死んでいる」という言葉をめぐる係争である。バルトはこの言葉を発することは不可能であるとしたが、デリダはこの言葉の発話可能性が真の言語行為の条件であるとした。この係争の分析から、発話とエクリチュールの関係に関する両者の相違を浮かび上がらせた。さらに、デリダのバンヴェニスト論「けい辞の代補」を分析し、言語と思考の関係を反映や置き換えの関係として捉える言語学者の反形而上学的形而上学に対するデリダの問題視を明らかにした。以上の研究成果は、「「私は書く」の現前性から「私は死んでいる」の可能性へ――バルト、バンヴェニスト、デリダ」2~4として発表した。 (2)デリダの反形而上学的形而上学批判の様相をより明瞭にするために、隠喩論をめぐる論文「白い神話」の分析に取り組み、その新たな読解を提示した。第一に、アナトール・フランス「アリストとポリフィル――形而上学的言葉遣い」やヘーゲルの隠喩論などに対するデリダの読解を検討し、「形而上学的言語は色褪せた神話=隠喩にすぎない」という見解はデリダが脱構築する形而上学的隠喩論であることを明らかにした。また、隠喩にすべての比喩形象を収斂させようとする同時代の傾向にデリダが否定的であったことも明らかにした。以上の研究成果は、「「白い神話」という神話」「一般的隠喩論の不可能性へ向けて」として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1960-70年代フランスにおける発話理論とバルトらの文学理論、また、デリダの脱構築思想との微妙な関係について調査と読解を進め、関連論文7本を発表し、関連するレクチャーも行っており、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、隠喩論をめぐるデリダの論文「白い神話」の読解を進め、デリダがアリストテレスの隠喩論に隠喩論と形而上学の共犯を読み取っていることを明らかにする。 第二に、以上に明らかにしたデリダの形而上学批判を踏まえたうえで、1970-80年代のデリダのテクストを読解し、デリダによる「新たな言語の発明」という主題について、自伝やフィクションとの関係、また、言語行為論との係争との観点から追究する。
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Causes of Carryover |
2~3月に計画されていた研究会および学会が延期となり、そのための書籍費他の物品費および旅費が使用されなかったため。 延期になった研究会・学会については、翌年度の研究費において、書籍費他の物品費および旅費として使用する。
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Research Products
(10 results)