2020 Fiscal Year Research-status Report
The Relations between the Notion of Ecriture and the Theory of Enunciation in Barthes, Blanchot, Derrida
Project/Area Number |
19K00513
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
郷原 佳以 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (90529687)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジャック・デリダ / モーリス・ブランショ / ロラン・バルト / インヴェンション / 隠喩論 / 「白い神話」 |
Outline of Annual Research Achievements |
バルト、ブランショ、デリダにおけるエクリチュール概念と発話理論の関係を明らかにするという本研究の目的に沿って、令和2年度は主として以下の研究を行った。 (1)隠喩論をめぐるデリダの論文「白い神話」の分析をさらに進めた。第一に、デリダは「摩滅=利子(usure)」という語によって、形而上学的な類似に基づいた隠喩概念を機能不全に陥らせる「絶対的摩滅」の可能性を追究したことを明らかにした。第二に、デリダはアリストテレス隠喩論の形而上学との密接な繋がりを暴いたうえで、形而上学の支配を穿つ破局的な転義運動を追究したことを明らかにした。以上の研究成果は、「摩滅と類比のエコノミー」「形而上学の壮大な連鎖、あるいは、星を太陽とみなすこと」として発表した。 (2)1980年代デリダの「プシュケー」や「黙示録でなく、今でなく」などの分析によって、この時期のデリダが言語行為論の一部の命題に疑義を呈しながら、「インヴェンション」概念を系譜学的に再考し、他なるものを我有化するのではないいかなる語りがありうるかを探究していたことを明らかにした。以上の研究成果は、「他なる語りのインヴェンション」「アポカリプスとインヴェンション」「発明の再発明の夢」として発表した。 (3)バンヴェニストの中動態についての論文を精査すると共に、文学や哲学の理論におけるその援用の是非について検討した。また、バルトの「「書く」は自動詞か?」の再検討を通して非人称的な文学言語と中動態の差異について論じた。以上の研究成果は中動態研究会でのコメントおよび論文「中動態と非人称」に結実した。 (4)ブランショのドイツ・ロマン主義論やレチフ・ド・ラ・ブルトンヌ論を読解し、言語および書物の物体性や生と死の二重性に対するブランショの眼差しの深さを明らかにした。以上の研究成果は研究発表「「生きた書物」とフェティシズム」などとして発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1960-80年代における発話理論、言語行為論とブランショやバルトの文学理論、デリダの脱構築思想との関係について調査と読解を進め、関連論文8本を発表し、関連する短文執筆や研究会での発表、コメントも行っており、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、バルトとブランショのエクリチュール論の比較を両者のフローベール論を通して行う。 第二に、1980年代のド・マン論などの読解を通して、デリダにおける「他なる語りのインヴェンション」の追求を「虚構的なもの」や「自伝的なもの」、喪の問題などに注目して進める。
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Causes of Carryover |
6月に予定されていたフランスでの学会が延期、7月、10月に予定されていた国内学会がオンライン化となり、そのための旅費が使用されなかったため。翌年度の研究費において、書籍他の物品費および延期開催される学会の旅費として使用する。
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Research Products
(13 results)