2021 Fiscal Year Research-status Report
The Relations between the Notion of Ecriture and the Theory of Enunciation in Barthes, Blanchot, Derrida
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19K00513
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
郷原 佳以 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (90529687)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジャック・デリダ / モーリス・ブランショ / ロラン・バルト / エクリチュール / プロソポペイア / 中動態 / 非人称 |
Outline of Annual Research Achievements |
バルト、ブランショ、デリダにおけるエクリチュール概念と発話理論の関係を明らかにするという本研究の目的に沿って、令和2年度は主として以下の研究を行った。 (1)デリダの論文「プシュケー――他なるもののインヴェンション」や「黙示録でなく、今でなく」を分析し、脱構築の使命である「他なるもののインヴェンション」とは、自己反照的で鏡像的なエコノミーに寓話的で途方もない(fabuleux)錯綜をもたらすものであることを明らかにした。研究成果は「鏡を割るプシュケー、アイロニーのアレゴリー」「黙示なき破局の寓話」として発表した。 (2)デリダのポール・ド・マン追悼講演録『メモワール〔記憶=報告書=回想録〕』の読解を通して、デリダが記憶や喪の問題をめぐってド・マンのアレゴリー論やヘーゲル論、自伝論などを参照し、応答しながら考察を展開していたことを論証し、両者の共通性と差異を明らかにした。研究成果は「「メモワール」の保持と欠如」「「プロソポペイア、未来からの遂行的発話」「虚構と真実の間の滞留」として発表した。 (3)1960年代におけるバルトとブランショのエクリチュールをめぐる考察の比較検討を行った。第一に、バルトは言語学者バンヴェニストの中動態をめぐる研究とディスクール理論とを併せて文学理論に援用し、発話理論的観点で文学作品を読むことを提案した。対してブランショは文学の言語をコミュニケーションモデルで捉えることに違和を示し続けた。第二に、両者ともに書くことをめぐるフローベールの葛藤に大きな刺激を受けてエクリチュールについての思考を深化させた。フローベールを通して、バルトは無限の訂正行為による文体の追求に、ブランショは何ものをも内包しない未知の言語に巻き込まれることにエクリチュールを見出した。研究成果は「中動態と非人称」「バルトとブランショにおけるフローベール的エクリチュール」として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1960-80年代におけるバルトやブランショのエクリチュール概念と発話理論との関係、記憶や喪の語りや自伝の問題をめぐるデリダとド・マンの関係などについて調査と読解を進め、関連論文7本、間接的に関わる論文1本を発表し、関連する短文執筆や学会発表、翻訳も行っており、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
デリダの隠喩論を論じた際に取り込めなかった初期著作『グラマトロジーについて』の読解を行い、1960-80年代のデリダにおける「他なる言葉のインヴェンション」の追求と発話行為の関係についてのこれまでの研究をまとめ、書籍にする。
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Causes of Carryover |
4月の国際学会がオンラインとなり、7月、9月、10月の国内学会や研究会もオンラインとなったため、旅費が使用されなかったため。翌年度の研究費において、書籍他の物品費および国内学会・研究会の旅費に使用する(延期となった国際学会はオンライン開催予定)。
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Research Products
(14 results)