2020 Fiscal Year Research-status Report
可能動詞化の方言横断的多様性とその知識の獲得に関する理論的・実証的研究
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19K00554
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Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
高橋 英也 岩手県立大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90312636)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江村 健介 岩手県立大学, 公私立大学の部局等, 助教 (60757128)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 東北方言 / ラル/ラレル/ラサル / 短形受動文 |
Outline of Annual Research Achievements |
R2年度は、コロナウィルスの感染拡大の影響を含む諸般の事情により、実証的研究を伴う課題(C) (D)の遂行が難しい状況であったことから、理論的考察に注力し、主に課題(A)『接辞eの分布と可能動詞の形態統語論』と(B)『可能動詞の文法に関する方言横断的研究』に焦点を当てた研究を実施した。具体的には、前者については、福島方言と岩手方言を中心に、東北方言の受動文における主語の生物性制約と受動形態素の選択の相関(非情物主語の直接受動(r)ar=短形受動文と有情物主語の間接受動(r)areの差異)について検討し、受動形態素ラレが接辞(r)arとeとに分離されるとの提案(H31年度の研究において提示)を補強する議論を提示した。第二に、H31年度の研究成果を踏まえて、「動詞接辞(r)arは出現・発生を表す動詞アルが文法化した非対格構造を持つ機能範疇を成す」という仮定の下で、東北方言における3種類の可能形式「ラル/ラレル/ラサル」について検討し、それらが互いに示す共通点や差異が、接辞arの形態統語論の観点から統一的な分析により導出されることを論じた。具体的には、接辞(r)arが具現しInchoative構造を内包する機能範疇(の連鎖)は、Root, v, Voiveという統語的要素をいずれも選択できるという点で、動詞句の階層において分散して生起可能であることを提案した。また、この提案の帰結として、当該の可能形式が示す自発・受動用法との連続性について、形態統語的観点から統一的な分析の方向性を提示することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者および分担者は、頻繁に研究打ち合わせを重ね、論文1本の刊行、および学会と研究会での研究発表2件を行なった。これまでの研究成果を踏まえた理論的考察を展開することで、課題(A)(B)については当初想定していた目標をほぼ達成できたものと考える。実証研究である課題(C)(D)については、コロナウィルスの感染拡大の影響等により十分に満足できる進捗状況とは言えないものの、R3年度の質問紙調査の実施に向けた準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
理論的研究を中心とした課題(A)(B)については、現時点での順調な進捗状況を踏まえ、引き続き研究代表者および分担者間での打ち合わせ、さらには関連分野の研究者との活発な情報交換を通して、最終年度における研究の総括を実施することについて確認済みである。他方、実証研究である課題(C) (D)については、質問紙調査をR3年度に予定しており、感染症予防に配慮した実施内容・方法について引き続き検討を行なっている。
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Causes of Carryover |
実証的研究を伴う課題(C) (D) について、コロナウィルスの感染拡大の影響を含む諸般の事情により、質問紙調査の実施を先送りにしているためで、R3年度に実施可能な調査の内容・方法については現在検討中である。
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Research Products
(3 results)