2019 Fiscal Year Research-status Report
An Experimental Phonetic Study of Speech Timing Control in Kagoshima Japanese
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19K00562
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
竹安 大 福岡大学, 人文学部, 准教授 (80585430)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 鹿児島方言 / 促音 / シラビーム方言 / 音声産出 / 音声知覚 / 持続時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
鹿児島方言は日本語におけるシラビーム方言の一つであり、音節の時間制御に関して東京方言をはじめとするモーラタイミングの方言とは異なる特徴を持つことが指摘されているが、近年ではその特徴が失われつつあるという指摘がなされている。本研究課題は、鹿児島方言高年層と若年層の促音の音声産出・知覚に関する調査を通して音節の時間制御上の特徴を明らかにすると同時に、言語変化において音声産出・知覚が果たす役割を調べることを目的とするものである。 平成31年度/令和元年度は、主に鹿児島方言若年層と高年層に対する音声産出実験を行ってデータを収集するとともに、促音の有無に伴う先行母音及び後続母音持続時間の分析を行った。持続時間の分析と合わせて、伝統的なアクセントがどの程度保持されているのかについても分析も行った。その結果、若年層は高年層に比べてモーラタイミングの方言と近い時間制御上の特徴を有することが明らかとなった。また、鹿児島方言は促音の有無によって先行母音の持続時間が大きく変化しないとされてきたが、調査対象とした話者は、高年層も含めて促音の前で先行母音持続時間の延長を起こしており、高年層であっても伝統的な鹿児島方言の音節時間制御上の特徴を失いつつあることが示唆された(以上の内容は令和2年度に学会等で発表予定)。 また、本研究では鹿児島方言の音節時間制御の特徴をより詳細に検討するため、日本語のモーラタイミングの方言のほか、日本語以外の言語との比較も計画しているが、平成31年度/令和元年度は福岡方言(モーラタイミング)のデータと韓国語(いわゆる音節リズムの言語)についての予備実験も行い、データ収集、分析を行った。さらに、音節の時間制御に関連して、促音に関する音響的不変性の議論が非常に重要になると思われるため、これに関連する可能性がある発話速度の影響を見るためのデータ収集も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの影響により、予定していた調査や作業を中止せざるを得なくなり、特に鹿児島方言高年層のデータ収集が遅れている。その一方で、韓国語の調査は当初想定していたよりもスムーズに進み、また、鹿児島方言に関する分析をより一般的なものにしてくれると思われる音響的不変性という枠組みでの分析を取り入れることができ、本研究課題の構想時よりもより広いスコープでの研究が可能になる見込みである。以上のことから総合的に判断して、おおむね順調に進展しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、引き続き鹿児島方言の音声産出のデータ収集・分析を行いながら、知覚実験も合わせて実施していくことで、音声産出で見られた音響信号の中の共変的手がかりが音声知覚においてどのように用いられているのかを明らかにする。 新型コロナウイルスの影響により、引き続き調査の実施が困難である可能性があるが、知覚実験に関してオンラインでのデータ収集が可能かどうか(物理的に可能かどうかだけでなく、データの信頼性が失われない範囲で可能なのかどうか)を検討したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、当初予定していたデータ収集や分析作業ができなくなり、繰越が生じた。オンラインによりデータ収集ができないかを検討し、繰越した分をそのためのツール購入などに充てる。
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Research Products
(3 results)