2020 Fiscal Year Research-status Report
第一言語および第二言語におけるメタファーの創造と解釈可能性に関する実証的研究
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19K00566
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Research Institution | Nagoya Keizai University |
Principal Investigator |
中村 裕昭 名古屋経済大学, 人間生活科学部管理栄養学科, 特任教授 (00559205)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Birdsell Brian 弘前大学, 教育推進機構, 准教授 (40646296)
立田 夏子 弘前大学, 教育推進機構, 准教授 (50364831)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | メタファー / 好奇心 / フレーム効果 / 関心度 / 視覚的メタファー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度、 我々の研究はとくに二つのテーマに焦点を当てて実施した。ひとつが性格傾向としての好奇心と、もうひとつは、広告(ポスター)における視覚的メタファーの効果をあきらかにすることである。この研究目標を達成するために第一に日本語で個人の性格・性向をスケールで示すようなアンケートを作成した。本研究は、弘前大学の教養課程の学生たちを被験者として、Googleフォームズによるアンケートの形式で実験を実施した。実験において、好奇心のアンケートの結果(N=122, 男性68, 平均年齢19.4)は質問項目そのものは中程度以上の相関を示して、妥当であることがあきらかにされたが、好奇心5次元尺度の各項目とメタファーの創造的(新奇的)解釈の相関は明らかにできなかったので、質問形式や研究方法を再検討中である(この結果は2020年度の日本心理学学会大会で発表した)。 広告におけるメタファーの効果については、関心度(engagement)、効果性(effectiveness)、メタファーフレーム効果の有無の、三つの視点から同様に学生の実験参加者のデータをもとに考察し、視覚的メタファーを用いたポスターが、直接商品の画像を利用したポスターよりも、被験者を惹きつけ、フレームを効果的に活用していることを発見した。成果は、“The Asian Conference on Psychology & the Behavioral Sciences”で口頭発表するとともに、Japanese Psychological Research(日本心理学会ジャーナル)に投稿して、現在査読中である。コロナ肺炎の蔓延により、実験が十分実施できなかったり、日程が遅れたりした中、まずまずの成果をあげたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、学生を被験者として、第一言語、第二言語におけるメタファーの解釈や考案の実験を重ねて、抽象的な事物が、メタファー(特に体現化された認知(embodied cognition)をともなうメタファー)が、どのように視聴者にわかりやすく、効果的に伝達するとともに、新規の解釈やメタファーの創出を生み出すかを明らかにしようとするものである。本研究は、理論的な研究よりも、数多くの実験と、その統計的分析により経験的にメタファーの創造的効果、受け取り手を惹きつける効果を検証することを目指したものである。2020年度春にはいくらか実験が可能であり、研究の方向性の妥当性を感じさせる効果はあったものの、夏以後はコロナ新型肺炎の蔓延により被験者をあつめて追実験、新規実験を行うことが全くできない状況となった。本研究にとっては多数の被験者を対象とする実験が、統計的手法を用いた考察の前提となっており、実験参加者を均質な環境で集めて実験できないなか、本研究の進捗度も停滞せざるを得ない状況となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、メタファーの理論的研究に基づいて、マルチモーダルな、とくに視覚的効果に訴えるメタファーの考察を重ねて質問項目を考案し、多数の実験参加者を対象とするアンケートに基づいて、メタファーの効果、身体化された認知による伝達効果、視聴者の感性を刺激し惹きつける効果、新しいメタファーが想像されるメカニズムを明らかにすることを目的とする。今後は、コロナの感染状況が収まり、また対策を施して、これまで同様新規実験を重ねていきたい。新年度に入り新規実験を開始したとたんに、ふたたび感染症の広まりによりいったん中止を余儀なくされたが、現在準備を完了したアンケート式の実験を再開し、それをもとに統計的な考察を加えて、直接的な表現よりもメタファーを使用した表現が持つ効果をあきらかにし、国際的な場で発表する予定である。
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Causes of Carryover |
本研究は、学生の被験者に対してアンケートを実施し、その結果を統計的手法で解析することでメタファーの創造性、効果性、受け取り手を惹きつける魅力を解明することを目的としている。本研究は、まず有効な回数の実験ができなかったため、統計的な分析も限定的とならざるを得なかった。よって実験参加者に対して支払う謝金、実験準備のための経費も執行できる環境になかった。また研究成果を発表するための国内外学会の多くがオンライン開催となって勤務先から発表する事態となったため、旅費が使用できなかった。いずれにしても言語学的、心理学的実験が行えなかったため、統計的な分析も不十分となり、研究成果も発表の場が失われたり、開催方法が変更された。2020年度未使用の経費は、次年度実験や研究成果への発表に使用すべく、次期実験を準備している段階である。
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Research Products
(2 results)