2021 Fiscal Year Research-status Report
言語文化に起因する価値観とフェイスが表出する「舌打ち」と「笑い」の実証的研究
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19K00580
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Research Institution | Yamanashi Prefectural University |
Principal Investigator |
萩原 孝恵 山梨県立大学, 国際政策学部, 教授 (90749053)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | タイ人日本語学習者 / 舌打ち / 三者会話 / 映像データ / 日本人の笑い / タイ人 / 文化差 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、非言語行動としてタブー視される「舌打ち」と、特におかしくもないところで笑う不可解な「笑い」を、①意味・機能、②価値観、③フェイスという3つの観点から明らかにしようとするものである。 1.舌打ちについて これまでの舌打ち研究は、音声データによるものであり、映像データによる分析ではないことを指摘したうえで、今年度は、〈時間〉と〈モダリティ〉という2つの文脈の中で、舌打ちがどのように共起し、どのような意味で使用されているのかについて、映像データを通して分析した。分析データは、タイ人日本語学習者15名による三者会話(3名×5組)の映像で、1)表情、2)視線、3)ジェスチャー、4)発話の連鎖的関係と統合的関係をマルチモーダルに捉え検討した。本研究成果は、2021年8月にオンラインで開催された国際シンポジウムで発表し、12月に同シンポジウムの論文集に投稿した。 2.笑いについて 本研究では、これまで「タイ人の笑い」を分析対象として、笑いの異文化について言及してきた。しかし、笑いの異文化についてさらに研究を進めるためには、一方向からの検討であってはならない。そこで今年度は、特におかしくもないところで笑う不可解な「日本人の笑い」を分析対象として研究を進めた。特におかしくもないところで笑う「日本人の笑い」は日本映画から抽出し、日本文化に造詣が深いタイ人研究者2名と、日本語の笑いを研究している日本人2名によるパネルディスカッションを企画した。そして、2022年3月に開催されたタイ国日本語教育研究会年次セミナー分科会で発表した。発表では、特におかしくもないところで笑う「日本人の笑い」が、タイ人の目にどう映っているのか、そこに文化差はあるのかを、解釈・評価・判断といった観点でアノテーションし検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
舌打ちと笑いに関する研究は概ね順調に進んでいるが、2020年度に収集した映像データの文字化作業が遅れているため、総合的に判断して(3)と評価した。 舌打ちについては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で延期となっていた「第24回ヨーロッパ日本語教育シンポジウム(16th EAJS International Conference 2020)」が2021年8月に開催され、そこで研究成果を発表した。また、『第24回シンポジウムAJE論文』に投稿した。 笑いについては、タイ人研究者2名と日本人研究者によるパネルディスカッションを企画し、2022年3月に開催された「第34回タイ国日本語教育研究会年次セミナー分科会」で発表した。 しかし、今年度中の完成を目指していた映像データの文字化については、作業の複雑さから予想以上に時間がかかり、次年度完成を目指している状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
・すでに収集している映像データの文字化作業を完成させる。 ・日本映画やドラマにみられる舌打ちや笑いを抽出し、タイ人研究者と検討する。 ・「価値観」「フェイス」といった観点からの研究も進める。
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Causes of Carryover |
昨年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症の影響により研究計画の変更を余儀なくされていることが理由である。また、依頼した文字化作業の遅れによる繰り越しも一理由である。 次年度は、収集したデータの文字化作業をすべて完了させるための経費、海外共同研究者との課題検討のための経費、データ処理や分析に必要な経費等に使用する。
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Research Products
(3 results)