2020 Fiscal Year Research-status Report
往来物出版を基軸とした言語文化史と地域性に関する研究
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19K00620
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
郡 千寿子 弘前大学, 教育学部, 教授 (50312476)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 往来物 / 山陰地域 / 言語生活 / 教育環境 / 海域交流 / 北前船 / 出版文化 / 日本語史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本語資料として注目されてこなかった往来物を活用し、日本語変遷とその要因を解明することや海域を通した文化交流の様相を明らかにすることを目的としている。東北地域における調査研究と研究成果、北陸地域における調査研究と研究成果をふまえて、本研究期間においては、島根、鳥取、山口といった山陰地域に焦点を絞って、調査研究をすすめる。 言語は、東日本と西日本という区分や、方言周圏論といった京都を起点に周囲に伝播するという考え方が基本であった。しかし、言語や文化の流入や拡散は、陸路だけでなく、海路からもおこったのではないか、という仮説に基づき研究をすすめている。 江戸時代、北前船という日本海航路を利用して、多くの物資が、関西圏から関東を経由せず、直接に東北や北海道に届けられた。そうした海域交流の影響と言語変遷の関係性について考察分析を試みている。 出版文化という基軸を用いて、往来物という資料を利活用し、言語変遷の一端を明らかにしたいと思うが、それぞれの地域における往来物資料の所在確認がまず必要となってくる。資料の書誌的調査、地域ごとの偏在状況等を確認、分析していく予定であるが、山陰地域は、往来物調査が今まで行われていない空白地帯である。 当該年度は、島根県立図書館、鳥取県立図書館について、往来物資料の所在調査を行った。調査対象の資料についての分類整理も行い、加えて、当該地域の教育環境や江戸時代の歴史文化的背景についての現地調査をすすめた。特定資料の国語資料としての可能性について、島根県立図書館所蔵の往来物資料の分類整理について、研究成果をまとめ公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
公務多忙(大学理事・副学長)で、研究時間の確保が困難であった。加えて、当該年度は、新型コロナ感染が世界的規模で発生し、出張を伴う、本研究の基盤となる文献調査が行えない期間が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究開始時期である2019年度は、新型コロナ感染症の影響で、政府の緊急事態宣言がでるなど、全く研究をすすめることができない状況にあった。2020年度は、感染状況の様子を見ながら、島根と鳥取において研究調査を実施した。しかしながら、研究が十分つづけられる環境にあるとはいえず、状況の好転を待って、順次、調査を進める予定である。
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Causes of Carryover |
公務(大学理事・副学長)多忙により、研究時間の捻出が難しいことに加えて、研究開始時の2019年度と2020年度は、新型コロナ感染症の影響で、出張調査が難しい環境にあった。今後、感染状況の好転を待って、島根と鳥取に加えて、山口での研究調査を実施予定である。
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