2021 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Variant Characters in Medieval Japan: On the Basis of the Three Sources of the Sounds and Glosses of the Dai hannyakyo Sutra Descended from the Mukyukai Ms.
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19K00635
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
梁 暁虹 南山大学, 総合政策学部, 教授 (00340274)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 音義 / 無窮会本 / 漢字 / 異体字 |
Outline of Annual Research Achievements |
交付した申請書の研究計画に従い、本年度に予定していた海外での国際学術会議、資料収集、海外(主に中国と韓国)の学者との交流活動は、新型コロナの影響のため、全うし得ずに終わった。しかし、一部の国際学術会議にはオンラインで参加、研究発表をした。また、国内での資料収集、著書及び論文執筆を中心とした研究活動は、順調に進んだと言えよう。最も重要な書稿、『無窮会本系「大般若経音義」』の研究――漢字研究を中心として』を完成した。これは、この三年間集中的に研究してきた無窮会本系『大般若経音義』の異体字研究、及びその漢字使用法についての総合的研究である。現在、2022年度南山大学学術叢書助成申請中である。 本書稿は、交付申請書の研究テーマである「日本中世における異体字の研究――無窮会系本『大般若経音義』三種を中心として」――をベースに更なる展開を試みた綜合的研究である。科研費課題は、無窮会本、天理本、藥師寺本の三種を主要資料にした異体字の研究であるが、本書稿はこれら三種の写本以外に、六地蔵本、大須文庫本、高野山大学本、大東急記念文庫本、京都大学本等をも資料に加えた。その際、これまで蓄積されてきた漢字研究を取り入れつつ、テーマを漢字研究に絞り、異体字、訛字、訛俗字、倭俗字、日本古代の学僧の“漢字観”等の研究に渉るため、内容が豊富になったかと思われる。特に、漢字が日本に“輸入”されてからどのように発展、変化してきたかに焦点をあて、無窮会本系『大般若経音義』が日中漢字史研究において重要な価値があることを指摘した。 その他の研究結果は、論文計4篇を執筆、学術刊行物に投稿、既に出版された。また、計四回国際学術会議にオンラインで参加、四回とも“大会発言”との形式で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)異体研究の研究範囲が、無窮会本系『大般若経音義』の綜合研究に拡大したため。 本研究基金を申請した際、資料は主に無窮会本系統の『大般若経音義』三種を中心としたが、研究すべき資料が漸次増加し、無窮会本系『大般若経音義』の全てに拡大すべしと思うに至った。資料及び課題も必然的に増加し、これは即ち研究時間が増加したことになる。 (2)新型コロナの影響のため、原來予定していた2021年度に海外資料調査、海外学者と交流等、全て実現できなかった。国内での資料調査は、大体できたが、やはり、オミクロンの影響で、一部予定していた計画をキャンセルせざるを得なかった
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、更に以下二点について研究する必要がある。 ①“無窮会本系”に収録された多音節語(仏教経典の翻訳に因んだ音訳から生成された音訳語及び意訳語)の内容は、独特のフィーチャーがあり、これは研究する価値 があると思うに至った。無窮会本系『大般若経音義』は、掲出字、注音、釈義等の方面、また『大般若経』に対する単経字書、単経異体字字書、単経漢和字書の特徴に加えて未だ曽って注意されなかったことがあることを指摘し、それらは、かかる辞書、仏教音義書が日本にて「和風化」から「日本化」へと再進化、発展していった過程を示す貴重な資料である。研究目的は、即ち、“無窮会本系”に收録された多音節語研究を目的に据え、その「日本化」への過程を究明せんとするものである。 ②高野山大学蔵本、大須文庫蔵本などの漢字特色の研究 高野山大学蔵本、大須文庫蔵本などは無窮会本系の後期(室町時代)写本で、用いられた漢字はその時代の特色を具え、それらを無窮会本、天理本などの早期写本との比較研究から漢字が発展していった過程が窺えると思うに至った。それを明らかにするためには、資料調査の範圍を拡大させ、国内外の漢字研究專門家と学術交流をすることが望ましいが、果たして実現できるか否か未だ不明である。
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Causes of Carryover |
前述したごとく、新型コロナの影響のため、国際研究活動(国際学術会議、海外資料、海外学者との学術交流)は、全てできなかったので、研究費に余剰が生じることになった。 (使用計画)余剰の一部は、新資料収集に使用したく思っている。新しく出版された漢字研究著作や古代写本文献(購入、複写)などである。また、国内の学術会議、資料収集、可能であれば、海外の国際学術会議(秋以降)に参加する旅費にもあてがいたく思っている。
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Research Products
(8 results)