2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K00637
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Research Institution | Shitennoji University |
Principal Investigator |
高橋 美奈子 四天王寺大学, 人文社会学部, 准教授 (20319768)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 直子 学習院大学, 文学部, 教授 (30251490)
高梨 信乃 関西大学, 外国語学部, 教授 (80263185)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 文法的類義表現 / 気づかれにくい / 文法カテゴリ / 命題 / モダリティ / 複文 / 非母語話者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は以下のとおりである。文法現象を担う文法形式における類義表現(文法的類義表現)のうち、まだそれほど知られていない表現、あるいは類義であることが気づかれていない表現を抽出し、整理すること、また重要な類義表現に関しては精緻な記述を行い、日本語文法研究に新たな知見を加えることを目指す。また、その成果を日本語教育に応用することも視野に入れる。 当該年度(2019年度)については次のことを計画していた。①メンバー各人の担当領域([命題領域]・[モダリティ領域]・[複文領域])の日本語文法研究文献を通読し、文法的類義表現についての研究を整理する ②海外の文献で、日本語の文法的類語表現を扱っているものについて調査する ③「気づかれにくい文法的類義表現」を抽出する ④抽出した表現について具体的な記述を進める 研究実績としては、上記①~④のすべてに着手し、一定の成果を得た。2019年5月6日、7月20日、10月4日、11月30日、2020年2月2日、3月29日と計6回の研究会を実施し、この中で、メンバー各人の研究成果を報告し共有するとともに、研究上の課題についても話し合った。具体的な成果としては、③については次の成果を得た。[命題領域]:可能表現と可能性の表現、過去における試行を表す「~を試みた」と「~しようとした」など。[モダリティ領域]:指示・勧めを表す「しよう」と「しなさい」と「したら」、祈願を表す「ように」と「てほしい」と「といい」など。[複文領域]:「て形」節と文終止など。これら抽出された表現については、④すなわち記述を進めつつある。また、①・②を経て③の作業を進める過程で、対象とする「文法的類義表現」の認定の問題や、抽出のための方法についてもなお模索する必要のあることが判明した。これを受け、前者については視野を広げる方向に至った。後者については検討を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記したように、2019年度については概ね計画通りに進捗したと判断する。成果としては(1)各人、担当領域に関して、問題として取り上げるに足る表現をいくつか抽出し得たこと (2)それについて考察・記述を進めていること (3)表現を抽出する過程を経て、研究対象の範囲について再検討し見直しができたこと が挙げられる。(1)は具体的には次の通りである。[命題領域]:可能表現と可能性の表現、過去における試行を表す「~を試みた」と「~しようとした」等。[モダリティ領域]:指示・勧めを表す「しよう」と「しなさい」と「したら」、祈願を表す「ように」と「てほしい」と「といい」等。[複文領域]:「て形」節と文終止等。(3)については、対象として当初想定していた「これまでに気づかれていない」「異なる文法カテゴーに属する」という条件を具えた文法的類義表現を抽出することの難しさを再認識した。そこで、この2条件を具えた類義表現に限定することに拘らず、気づかれている、あるいは、同じ文法カテゴリーに属する表現であっても、重要視されずあまり知られていない類義表現、類義であることに関して十分な解決を見ておらず記述も十分でない表現も視野に入れ、それらの中で重要と思われるものは研究対象として取り上げることとした。これによって、より充実した内容になることを目指す。また、2019年8月開催「カナダ日本語教育振興会2019年年次大会」で「多文化社会における表現リテラシーを考える-学習者の日本語をどこまで許容するか-」というテーマで発表を行い、参加者との意見交換を経て、非母語話者の日本語の”不適切さ”のさまざまな様相と要因について新たに知ることができ、本研究が視野に置く教育分野への応用、日本語文法研究をどのように日本語教育に生かすかということについて考えを深める機会を得た。これらも本研究に活用する。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度については、当初は次のことを計画していた。①これまでに抽出した文法的類義表の重要なものについて、記述を行うこと ②非母語話者の産出物(既存コーパスのデータ)を分析し、そこから「気づかれにくい文法的類義表現」を抽出すること ③新たな非母語話者の産出データを得るため、アンケート調査を行うこと ④研究成果の一部を国際学会「国際日本語教育・日本研究シンポジウム」において発表すること ①・②は計画通りに進める。①については、前年度の研究成果として得られた各領域ごとの具体表現の記述を進める。それと並行して②新たな文法的類義表現の抽出にも努める。「現在までの進捗状況」に記したように、「気づかれにくい文法的類義表現」の認定について見直し、視野を広げたことで、対象となる文法的類義表現が増えることが予想される。 しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、現状では、研究方法についてのいくつかの変更を余儀なくされている。まず、メンバーによる研究会は、府県を跨いだ移動を控えるため、web会議システムを通した形が主体となることが見込まれる。しかしペースは落とさず、前年度のように年6回程度は開催する予定である。また、④の国際学会への参加については、同学会の次年度への延期が決定したため、これに代わる成果発表の場を模索する。しかし国内学会も現段階では開催が不確実なものも多いため、学会以外に論文発表などの形態も視野に入れる。また③についても、日本留学を予定していた非母語話者の減少が考えられ、想定していた量の産出データが得られない可能性があるので、これについても代替となる手段を模索する必要がある。たとえばインターネットを通じたアンケートの実施などが考えられる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては次のことがある。①物品購入で、予定通り行わなかったものがあること。具体的には、書籍(絶版であったため)、web会議システムの契約料(2019年度は使用の必要がなかったため)、文房具やパソコン関連の物品(手持ちのものを利用し、新しく購入しなかったたため)。 ②旅費の請求ミス。具体的には、研究会のための航空券(東京―大阪間往復)購入に際し、事前の申請を失念していたので請求を行わなかったこと。 使用計画としては、物品(書籍、パソコン関連品、文房具類)については計画のように行う予定である。しかし、2020年度に参加予定であった国際学会が新型コロナウィルス感染拡大の影響により次年度に延期されたため、同学会のために請求していた旅費は次年度に繰り越して使う見込みである。メンバーが国内で行う研究会についても、国内のコロナ問題が落ち着くまではweb会議システムで実施予定のため、その間の旅費は発生しない。また、非母語話者へのアンケート調査の費用として請求していた人件費・謝金についても、同じくコロナ問題の影響により非母語話者(日本の大学への留学生)が減少し、調査の規模が縮小されることが予想されるため、請求していたよりも少ない金額で済む可能性がある。その場合は、次年度以降の調査を拡大させ、それに伴って人件費・謝金で使わなかった分を次年度以降に繰り越すこととなる。
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Research Products
(2 results)