2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K00637
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Research Institution | Shitennoji University |
Principal Investigator |
高橋 美奈子 四天王寺大学, 人文社会学部, 准教授 (20319768)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 直子 学習院大学, 文学部, 教授 (30251490)
高梨 信乃 関西大学, 外国語学部, 教授 (80263185)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 文法的類義表現 / 気づかれにくい / 文法カテゴリ / 命題 / モダリティ / 複文 / 非母語話者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は以下のとおりである。文法現象を担う文法形式における類義表現(文法的類義表現)のうち、まだそれほど知られていない表現、あるいは類義であることが気づかれていない表現を抽出し、整理すること、また重要な類義表現に関しては精緻な記述を行い、日本語文法研究に新たな知見を加えることを目指す。また、その成果を日本語教育に応用することも視野に入れる。 2021年度については、2020年度以降のコロナ禍の影響を受けて当初計画を見直し次のことを計画していた。前年度に続き、①これまでに抽出した類義表現についてより精緻な記述を行う ②非母語話者の産出データを分析して「気づかれにくい文法的類義表現」の抽出を行う。また、前年度に未実現の③新たな非母語話者の産出データを得ることに取り組む。③は既存コーパスのような「日本語を使うタスク」の産出物ではない、非母語話者にとってより必要性・必然性の高い産出物の収集を行い、将来的にコーパスとして活用することを想定してのものである。 2021年度の研究実績として次のことが挙げられる。2021年5月9日、6月14日、7月31日、9月7日、10月11日、11月21日、12月26日、2022年2月6日、3月28日の計9回の研究会を実施し、メンバー各人の研究成果を共有するとともに、研究上の課題についても話し合った。具体的には次の「気づかれにくい文法的類義表現」を取り上げ、記述すべき内容を検討した。前件事態の成立を要件として後件事態が成立することを表す「たうえで」・「てはじめて」・「てこそ」、可能性を表す類義表現、願望を表す「ますように」・「てほしい」・「ないかな」、受身文、モダリティの諸概念。このように①・②を実践し一定の成果を得、その一部を論文の形で発表した。③は、非母語話者による「大学入学の志望理由書」作文、日本語上級学習者のテーマ作文を収集することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」にも記したが、2021年度については次のことを計画していた。①これまでに抽出した類義表現について、より精緻な記述を行うこと ②非母語話者の産出データを分析して「気づかれにくい文法的類義表現」の抽出を行うこと ③新たな非母語話者の産出データを得ること。 実際には、このすべてについて実践し、一定の成果を得ることができた。2021年5月9日、6月14日、7月31日、9月7日、10月11日、11月21日、12月26日、2022年2月6日、3月28日の計9回の研究会を実施した。これは想定の「年6回以上」を越える回数である。研究会において、メンバー各人の研究を報告し合い、成果を共有できた。研究会で検討された「気づかれにくい文法的類義表現」は次の通りである。〔命題領域〕可能性を表す「することがある」と類義表現 〔複文領域〕「たうえで」・「てはじめて」・「てこそ」、〔モダリティ領域〕願望を表す「ますように」・「てほしい」・「ないかな」。そのほか、受身文、モダリティの諸概念についても再検討した。また、中国語母語上級学習者の修士論文を分析し、気づかれにくい文法的類義表現が関与する現象として、助詞の選択、逆接の表現、継起の表現、様態の表現、理由の表現の選択をめぐる問題を抽出した。執筆者に対してはフォローアップインタビューも行い、文法的な誤りが見られた箇所について、なぜそのような表現を用いたのかを直接確認し、分析した。これらの成果の一部は論文の形で発表した。また③として、日本の大学に進学することを目指し日本語学校で学んでいる非母語話者39名に、「大学入学の志望理由書」というタイトルで作文を書いてもらい、書き言葉のデータとして収集した。これらを質的・量的分析の資料とすべく、手書きの作文をPDF化するとともにテキスト化した。来年度はこれをオンラインで公開することを目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、本研究の課題である ①これまでに抽出した類義表現についてより精緻な記述を行うこと ②非母語話者の産出データを分析して「気づかれにくい文法的類義表現」の抽出を行うこと ③新たな非母語話者の産出データを得ること に取り組む。 ①については、これまで、命題領域・複文領域・モダリティ領域のいずれに関しても複数の文法的類義表現について研究してきた。その成果を、学会発表、あるいは論文の形で発表することをめざす。すでに、「カナダ日本語教育振興会2022年度年次大会」での研究発表を予定しており、また論文発表の見通しもある。これらにより、本研究の目的の一つである「日本語文法研究に新たな知見を加えること」が達成されることになる。 ③については、2021年度に引き続き、さらに拡充する。具体的には、非母語話者によるテーマ作文(書き言葉)のデータ、アカデミックな口頭発表の音声(話し言葉)のデータの収集を計画している。また、比較対照のために、母語話者による同種のデータの収集も考えている。そしてこれらのデータを、②に活用する。また2021年度に③を行って得た「大学入学の志望理由書作文」を、②の材料とするほかに、大学日本語教員に志望理由書としての評価をしてもらい、その評価と作文テキストデータとを合わせてオンライン上で公開することを計画している。これらが「大学進学に必要な日本語力」や、「その獲得のために必要な教育内容」といった事柄についての研究への活用に資することを見込んでのことである。また、今年度に③として収集する各種データについても、整備した上で、将来的にはオンライン上で公開することをめざす。これらを日本語教育に関する研究に役立てるための材料として提供することで、本研究の目的の一つである「研究の成果を日本語教育に応用すること」が達成されることになる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては次のことがある。①物品購入で、予定通り行わなかったものがあること。具体的には、文房具やパソコン関連の物品購入が予定より少額であった(手持ちのものを利用し、新しく購入しなかったため)。web会議システムの契約料を使わなかった(有料コースを契約せずとも、メンバーがすでに研究・教育用に使用している会議システムの活用でまかなえたため)。②旅費を使わなかった(学会が現地ではなくオンライン上での開催となった。また研究会をすべてweb会議システムで行ったため)。③謝金・人件費を想定ほど使わなかった。 使用計画としては、物品(書籍、パソコン関連品、文房具類)については計画のように行う予定である。旅費については、2022年度に延期されていた国際学会の開催およびその形態が現時点では未定のため、請求した旅費を使用するかどうかも未定である。メンバーが国内で行う研究会についても、web会議システムでの実施が大半となる見込みで、その間の旅費は発生しない。そこで、今年度は、昨年実行したデータ採集を拡充したいと考えている。具体的には、非母語話者および母語話者を対象とするデータの収集とその整備を計画している。さらには、データをオンライン上で公開し研究に資することも想定しており、そのため人件費および謝金に関してそれなりの費用が必要となることが見込まれる。
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Research Products
(2 results)