2021 Fiscal Year Annual Research Report
部分関係の種類と表現形式の対応関係に関する日英対照研究
Project/Area Number |
19K00658
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
田中 秀毅 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (50341186)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 数量詞遊離文 / 部分解釈 / 比率 / 概数詞 / とりたて助詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は日本語数量詞遊離文によって表される部分関係について考察した。当該構文はタイプとトークンの関係(T部分関係、T<token)と単一個体とその一部分の関係(I部分関係、I<inalienable part)を表すことができるが、グループとメンバーの関係(M部分関係、M<member)は表すことができない。例えば、「太郎はその本を{二冊買った/10ページ読んだ}」は容認されるが、「*太郎はそれらの本を二冊買った」は容認されない(「それらの本を二冊ずつ買った」であれは容認されるが、この場合はT部分関係になる)。ところが、遊離数量詞の先行詞に数量詞が含まれる場合は、M部分関係の一種(比率)が表されうる。例えば、「おみやげにもらったたくさんの団子を{?? 2個/2, 3個/1個だけ}食べた」が示すように、遊離数量詞が基数詞単独の場合は容認性が下がるが、概数詞の場合と取り立て助詞のダケを含む場合は容認される。 遊離数量詞が概数詞の場合と取り立て助詞を含む場合の共通点は、先行詞が表す数量との対比が生じることである。すなわち、‘2, 3個’であれば‘たくさん(の団子)’に対して少量を意味し、‘1個だけ’であればそれ以上の数量が打ち消されることから、やはり‘たくさん(の団子)’のごく一部の数量であることを意味する。この対比の解釈は、概数詞と取り立て助詞を含む基数的数量詞が比率的数量詞として機能することを意味する。これは基数的数量詞の‘いくつか’が同じ環境で比率的解釈を受けることと並行的である(「おみやげにもらったたくさんの団子をいくつか食べた」)。これに対して、遊離数量詞が‘2個’の場合は先行詞の数量との対比が起こらず、比率的数量詞として機能できないため、数量の矛盾が生じて容認性が下がると考えられる。
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