2023 Fiscal Year Research-status Report
日本語学習者による漢字語彙の認知処理の特徴:学習者は漢字をどう捉えているか
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19K00737
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大和 祐子 京都大学, 国際高等教育院, 准教授 (80707448)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 日本語教育 / 漢字(語彙) / 認知処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、漢字語彙正誤判断課題(実験)と漢字異同判断課題(実験)の準備を完了させ、中国語を母語とする台湾人日本語学習者への視線計測実験を実施した。現在、この結果をまとめ、非漢字系学習者の実験を行う上で改良すべき点がないか確認している。 まず漢字語彙正誤判断課題の実験刺激については前年度までに概ね作成が完了していたため、実験実施を行い、過去に行った(視線計測を伴わない)同種の実験結果とあわせて、中国語を母語とする日本語学習者(以下、漢字系学習者)の日本語の二字漢字語の処理特徴が日本語母語話者に近いものであるか、もしくは、同じく日本語学習者である非漢字系学習者に近いものであるか、3グループ(漢字系学習者・非漢字系学習者・日本語母語話者)を処理の迅速さと正確さの両面から比較した。その結果、漢字系学習者は処理の迅速さの面でも正確さの面でも日本語母語話者と近い特徴を示していることがわかった。一部、非単語の処理において、処理の正確さに影響する要因が日本語母語話者と異なる点が認められたものの、漢字系学習者の日本語の二字漢字語(と漢字二字からなる非単語)の処理の特徴は、明らかに非漢字系学習者の特徴よりむしろ日本語母語話者の特徴と類似している点が多かった。 この後、非漢字系学習者に対しても視線計測実験を行う予定であり、最終的には、非漢字系学習者と漢字系学習者の視線計測実験の結果を比較し、漢字および漢字語彙の認知処理過程の違いを詳細に検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
準備していた実験刺激の一部が実験用ソフトではうまく表示されないなど、技術的な問題を克服するため、実験刺激の修正が必要になった。また、実験に使用する機器の数の問題で、視線計測実験の実施に当初の想定より長い時間がかかっている。そのため、現段階で予定したすべての実験が終了していない。以上のことから、研究進捗状況がやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
非漢字系学習者の視線計測実験と(可能であれば)日本語母語話者の視線計測実験を早い段階で行い、データ収集を完了させる。実験を実施する上で、ある程度集中的に実験を実施する場所・時間を確保することが必須であるため、一定期間、海外の日本語教育機関の協力を得て実験を実施することも検討する。
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Causes of Carryover |
実施予定の実験の一部が、調査予定国の状況により今年度中の実施が難しくなり、次年度に実施する予定となったため。
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