2021 Fiscal Year Research-status Report
図画工作科との連携による外国語教育授業における児童の発達に関する研究
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19K00760
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岩坂 泰子 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (80636449)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 達弘 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (10240293)
竹内 晋平 奈良教育大学, 美術教育講座, 教授 (10552804)
藤井 康子 大分大学, 教育学部, 准教授 (10608376)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 教科連携 / 初等外国語活動 / 初等外国語 / 図画工作科 / 社会文化理論 / マルティモダリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目となる2021年度の取り組みは以下の通りである。2021年度の成果は、本科研の申請時に計画・実践を行なっていたいくつかの実践授業を論文としてまとめることができたことである。発表した論文は以下の2つである。 一つは、2017年7月に岩坂が行なった小学校5年生を対象とした思考を絵に表すことを取り入れた外国語授業実践(この実践は小学校英語教育学会誌(2018年)に掲載)と2019年2月に分担者藤井康子氏とともに行なった小学校6年生を対象とした図画工作科との連携で行なった外国語授業実践(この実践は美術教育研究誌(2021年)に掲載)を本科研研究の理論的基盤である社会文化理論と、本研究で新たに開拓したマルチモダリティ(Kress, 2010)理論の統合理論で分析をし直し、分担者吉田達弘氏からの助言・指導を受け論文にまとめることができた。 もう一つは、2018年12月に分担者藤井康子氏と行なった小学校3年生を対象とした図画工作科と外国語の連携授業を本科研の理論の枠組みで再検討し、美術教育学誌に2022年3月に掲載された。 小学校外国語は2020年度から正式な教科となったが、2021年度に発表した2つの論文で扱った3つの実践は全て教科となる前の「領域」としての小学校外国語活動としての実践である。特に、2018年に行なった小学3年生を対象とした実践は、今回の指導要領改訂で初めて外国語活動としての実践が始まる前の中学年を対象とした先駆的な試みであり、この実践結果と意義を論文として発表できたことは、現行の指導要領下での初等外国語のあり方を考える上での検討材料としての価値を見出すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述の研究実績の概要で述べた論文執筆は、申請時当初、理論的枠組みとしてヴィゴツキーの社会文化的理論を基盤として実践を分析する予定で進めていた。しかし、図画工作科(芸術)との連携授業を考察する過程で、言語と文字を介さない芸術を同時に扱うことについての意義、あるいは必要性を社会文化理論のみで説明することには限界があった。 さらに、分析方法についても、申請時は、「教師や児童同士の身体的動き, 視線, 空間の取り方等の非言語データや作品に表出した意図の考察を加え, 会話分析の手法で分析する」予定であったが、これを以下に述べる言語とイメージを同時に分析対象とするマルチモーダル談話分析の方法へと大幅に軌道修正することとした。マルチモーダル談話分析とは、言語学習にとってイメージなどの視覚言語は、言語学習のための補完的役割ではなく、双方は同格・同等の価値を持つ表現手段であるとする、もう一つの理論的枠組となるマルティモダリティ理論(Kress, 2010)に基づいて分析を行う方法である。結果として、本研究が依拠する理論として、ヴィゴツキーの社会文化理論とマルチモダリティ理論を統合させた独自の枠組みを構築するに至った。 この理論基盤の検討、更なる理論構築のため、本来であれば分担者と対面での議論の場を設けたかったが、2020年度に引き続き、2021年度もコロナ禍がおさまらず、対面でのミーティング及び資料収集にはかなりの制限があり、オンラインとメールのやりとりが中心となり、想定外の時間がかかったことが主な原因である。計画では、論文執筆は半年から1年ほど前に終え、この理論と実践について関連分野に還元する準備に取り掛かる予定であったが、2021年度中には還元のための企画には着手できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方向性としては、ここまでの実践結果、論文発表を教育現場、あるいは関連の研究者に還元する方法を計画するべきであるが、2022年度は計画上では最終年度であり、計画の遂行を具体化する中で、1年間では完結しないと判断をした場合は、1年の延期を検討したい。 今後の研究推進方策案として以下が考えられる。 可能性1、本科研で構築した新しい社会文化理論とマルチモダリティの統合理論の枠組みでデザインした実践報告を科研チームで論文としてまとめ投稿する。 可能性2、教育現場の教員あるいは研究者らを対象にした研究会、あるいはフォーラムなどを開催し、ここまでに構築した統合論の枠組みを提案した後、教育現場の教員あるいは研究者らとともに教育的示唆についての議論を深める。また、開催する研究会等に、美術関係の専門家あるいは教育実践者などをゲストとして招き、アートと外国語(言語)が交差することの意義や効果についての講演あるいはワークショップなどを企画する。 可能性3、本科研の理論的枠組みによる新たな実践を幼稚園、小学校、中学校のいずれかの授業で行う。 以上の案については、コロナ禍の状況を見ながら研究結果の還元を行える方法を模索する。
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Causes of Carryover |
昨年度も引き続き、コロナ禍による移動制限が続いたため、分担者との対面での研究会や打ち合わせ等のための出張ができなかった。そのため、移動費として計上していた予算消化ができていない。今年度は移動の制限が少なくなるようであれば打ち合わせ等を対面で行うよう計画したい。移動地の候補は、九州(大分、熊本)、関西、愛知県豊田市の可能性が見込まれる。
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