2022 Fiscal Year Research-status Report
L2学習者におけるハングル読み書きの習得過程とその個人差に関する研究
Project/Area Number |
19K00818
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宇都木 昭 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (60548999)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
キム ミンス 東海大学, 国際教育センター, 講師 (20734833)
神長 伸幸 ミイダス株式会社(HRサイエンス研究所), HRサイエンス研究所, ゼネラルマネジャー (90435652)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 韓国語 / 朝鮮語 / 外国語教育 / 文字習得 / ハングル / 読み書き / 発達性ディスレクシア |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度までの調査では、単音節の文字の習得にかんするオンラインテストを実施した。2022年度はここから発展させ、正書法の「深さ」との関係に注目した。正書法の深さは、言語の書記体系が音素レベルをどの程度直接的に反映しているかに関するものである。英語の正書法は音素と綴りの対応関係が複雑であり、深い正書法となっている。韓国語は、単音節を見る限り浅い正書法であるかのように見えるが、単語のレベルでは文字と発音の対応関係において形態音韻規則がかかわっており、形態音韻論でいうところの基底形に相当するような表記をするため、深い正書法になっているといえる。 このことをふまえ、2022年度のハングル習得に関するテストでは、2021年度のテストに形態音韻規則がかかわる単語を追加した。具体的には、連音と鼻音化がかかわる単語をそれぞれ2語ずつ(高頻度語彙1語、低頻度語彙1語)追加した。そのようにして作成したテストを用い、新たに調査協力者を募ってオンラインテストを実施した。 また、2022年度までに実施した調査の結果を分析し、2022年7月に国際韓国語教育学会で「韓国語学習者はどのような文字を誤りやすいのか―日本の韓国語学習者を対象とした多肢選択テストの分析―」(原題は韓国語)という題目で口頭発表をした。このときの発表原稿をもとに、さらに追加の分析も施した上で、論文としてまとめ、2023年3月には学術誌に投稿した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画からは変更になったが、オンラインテストを行うという新たな方針のもとで順調に研究が進行している。研究実績の概要でも述べたように、2022年度のハングル習得に関するテストでは、2021年度のテストに形態音韻規則がかかわる単語の問題を追加し、さらに、参加者の注意度をチェックするためにビープ音の再生回数を問う問題を追加した。このようにして、2021年度の7問からなるテストから、2022年度には13問からなるテストへとアップデートした。これらをもとに、新たに調査協力者を募り、2022年5月から7月に9週にかけてオンラインテストを実施した。 また、成果の発表も進んでおり、2022年7月にオンライン開催された国際韓国語教育学会において、韓国語で口頭発表を行った。発表では質疑応答を通じて有益なフィードバックを得ることもできた。その後、追加の分析を施した上で英語で論文としてまとめ、2023年3月に学術誌に投稿した。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況にも述べたように、2022年度は新たなバージョンのオンラインテストを作成し、実施した。しかし、調査協力者数がまだ十分ではないため、同じテストを用いて新たに韓国語初級学習者から調査協力者を募り、同じオンラインテストを実施する。そのようにしてサンプル数を増やした上で、結果を分析する。 2022年に新たに追加した問題に対する分析は、2022年度中には行っておらず、2023年度に新たに行うことになる。この問題は形態音韻規則がかかわる単語であり、綴りの「深さ」によって難易度の高まった問題に対する正答率にどのような個人差が現れるかに注目することになる。それにより、旧バージョンの問題で正答率が高かかった参加者のうちでも、バリエーションが見られることが予測される。 以上のような観点に注目して分析を進め、学会で発表を行った上で、論文としてまとめて学術誌に投稿する予定である。 また、本年度が本研究課題の最終年度にあたることから、これまでを振り返った上で、今後の新たな研究課題へとつなげたい。
|
Causes of Carryover |
国際会議が対面ではなくオンラインで開催され旅費が不要になったため、次年度使用が生じた。論文を投稿した韓国の学会は掲載料がかかるため、次年度以降に掲載料を支出することになる。
|
Research Products
(1 results)