2020 Fiscal Year Research-status Report
オンライン外国語学習における学習行動ログデータの構成概念化に関する基礎研究
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19K00903
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小野 雄一 筑波大学, 人文社会系, 教授 (70280352)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仲谷 佳恵 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 特任助教 (70771864)
石井 雄隆 千葉大学, 教育学部, 助教 (90756545)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | リスニング学習方略 / 学習ログデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で通常予定しているカリキュラム編成を変更しなければならない状況があったためより大規模な実証実験については翌年度以降にまわさざるを得なくなった。しかし,チエル社が提供するCaLabo MX環境を利用したリスニング学習(ディクテーション課題)において学習者のログデータから学習方略に関する構成概念を予測できるかという課題について,小規模ながら(N=76)実験を行なった。 本実験では,オンライン環境でディクテーションを学習する際に,「再生」,「戻し」,「2秒前」,「2秒後」,「速度調整」,「繰り返し再生」などの機能をどのように利用しているのかという点から分析を試みた。リスニング学習方略としてNix(2016)のEFL Listening Strategy Inventory (ELLSI)を利用した。最初の2週間はシステムに慣れるための週と位置づけ,使用感を確かめながら易しめの文を利用して練習を行い,そして,その後4週間を使って長さの異なる4つの課題を設定した。入手した全ログデータ数は22,596であった。 ELLSIに関しては「グローバルな理解」「非言語情報やグルーピングの利用」「知識や経験」「一般的な学習」と4つの因子に分類を行い,上述のシステム上の機能に関する学習者の行動が上述の因子とどのような相関が観察できるのかについて分析を行った結果,短い課題文については「非言語情報やグルーピングの利用」とスピードを変える機能との間に弱いながら相関が認められた。文量が短いほどスピードを遅くしてしっかり聞こうとする傾向が弱いながら垣間観る結果となった。また,中程度の長さの文の場合は「内容をしっかり理解する」「聞き取りを行うまでに知っていることや知らないことを確かめるようにする」学習者は,「停止」や「戻し」機能は使用しないということがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上でも述べた通り,本研究はある程度実証実験のデータをやや大規模に取得し,分析・評価に関する研究に舵を切る予定であったが,オンライン教育の実施の中で,多様なシステムの利用や,リアルタイムによるきめの細かな指示を行うことが難しく,また,学習者のPC環境,通信環境が整えることもできず,可能な範囲での小規模実験しか実施できなかった。この傾向は継続されることが予測され,PC教室を利用した語学の授業は制限されている。したがって,受講者間のシステム環境の平等性・安定性が一律になっていない。それに加え,今回の新型コロナウイルス感染症の中での授業実践の中で無視ができないのは,オンライン学習疲れ(fatigue)が大いに蓄積されているため,その中でも本研究の取り組みの中で得られたデータの信頼性の問題も考えられる。そのような中で,今後はパンデミック状況下でのオンライン学習においてという前提での実践という文脈の中で分析を行っていく必要性が出てきているように思われる。 しかし,今年度は学習者もだんだんとオンライン授業に慣れてきており,情緒要因,動機付け要因は安定してきているように感じられる。また,学習環境,特に通信の快適性やデバイスなどの要因については前年度よりも向上している。よって,当初の計画を維持しつつも本研究を実施している状況を考慮するような形で研究を行っていく必要があるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はもう少し実験協力者数を増やし,より長期的な実験を実施する必要がある。また,上述の通り,パンデミック状況下でのオンライン学習という要因についても研究代表者が調査および報告しているため,その結果を踏まえ,実験協力者に無理のない範囲で,通常の授業の中で十分実施可能な中で実験を進めていく必要性が大きくなっている。具体的にはマテリアル文を調整し無理のない範囲で課題を設定し,安定したデータを取得するように工夫していきたいと考えている。また,研究分担者の研究も統合して,分析や考察を慎重に進めていくことを実行していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で,想定していた実験実施にかかる費用および旅費に関する支出が予定通り執行できなかった。次年度使用の計画としては,今回実施できなかった実証実験の実施,発表に向けた準備のために支出する予定である。
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Research Products
(6 results)