2020 Fiscal Year Research-status Report
受発信文書から見る開港期の出島商館 ―明細目録データベースの作成と分析―
Project/Area Number |
19K00935
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松井 洋子 東京大学, 史料編纂所, 教授 (00181686)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日蘭関係史料 / 日本商館文書 / 出島 / オランダ東インド政庁 / 目録データベース |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、オランダ国立中央文書館所蔵「日本商館文書」のうち1843年から1860年の「日本商館文書」を対象に、①各年の受発信文書簿に含まれる文書の一点毎の目録情報をデータベース化すること、②受発信文書を中心に、当該期の出島で作成され残された文書群の書式・性格・相互関係とその変化について史料学的検討を行なうこと、③開港期の出島をめぐる人的・社会的関係、商館の運営と機能の変化を考察することを目的とする。 2019年度行なった1843年から1858年の発信文書(2241点)に続き、2020年度は、1859年466点、1860年111点の1点毎の目録情報入力を終えた。続いて受信文書について、1843年から1858年の目録入力を行なった(2454点)。また、通常の受発信文書に加え、1839~1841年、1845~1847年、1850~1854年について存在する、秘密受発信文書控簿ついても目録入力を行なった(216点)。ただし、文書管理システムとしては、本国植民省におけるような、一般文書と秘密文書を厳密に分けて管理する体制は出島では貫徹しておらず、1855年以降は再び、受発信書翰集の中に秘密文書も見いだされるようになる。また、主題毎に関連文書をファイリングするフルバールVerbaal方式も、出島ではあまり普及しなかったとみられる。 文書点数が1855年以降増大し、宛先が多様化するのは受信文書も同様である。それまでの定期船年1隻から、1854年の2隻、55年以降は4隻以上と、来航船の数が増え、海軍関係者等出島に滞在する貿易担当者以外のオランダ人も増加し、出島内の人的構成の変化は、情報伝達構造にも影響を及ぼしている。 一方、上海及び香港のオランダ領事官との連絡が次第に活発となり、アメリカ、フランス等の領事官との書翰も、1858年以降少数ながら見られるようになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度までで、発信文書総計2818点の1点毎目録情報の入力を終え、より複雑で多様な形態を持つ受信文書についても、その大半(2454点)を終了した。さらに、当初視野に入っていなかった秘密文書(216点)についても対象として入力することができたことにより、文書構造全体への理解が深まることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
オランダ国立中央文書館における原文書確認の調査(2回目)については、現状では予定が立たないが、感染症の流行状況を見て判断したい。 その分、データ蓄積作業を優先し、入力作業時間を増やすことで、2021年度前半には、目録データの入力を完了し、全体を整備して史料編纂所所蔵史料目録の内容細目としてインターネット公開することができる見込みである。 目録情報を生かし、受発信文書控所収文書を中心に、出島の運営と人的関係等につき、考察を進めたい。
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Causes of Carryover |
感染症流行の拡大により、海外旅費の執行ができなかったため、残額が生じた。2021年度についても、旅費の執行については慎重に判断する必要があるが、執行不可能の場合は、人件費を追加し、翻刻等の蓄積を進めることとしたい。
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