2019 Fiscal Year Research-status Report
境界域をまたぐ朝鮮人の社会に関する総合的研究 -朝鮮南部・玄界灘・瀬戸内を対象に
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19K00945
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
愼 蒼宇 法政大学, 社会学部, 教授 (80468222)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
檜皮 瑞樹 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (00454124)
宮本 正明 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (20370207)
鄭 栄桓 明治学院大学, 教養教育センター, 教授 (90589178)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 朝鮮人 / 境界 / 植民地 / 冷戦 / 労働 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日清・日露戦争の時期から1950 年代までの時期を対象とした、当該境界域をまたぐ朝鮮人の生活と運動、社会形成に関する総合的な研究である。具体的には、朝鮮半島南部と玄界灘(対馬・壱岐・五島列島ほか)、そして瀬戸内の島嶼・沿岸地域をフィールドとし、①朝鮮半島南部を出身地とする朝鮮人による玄界灘、瀬戸内沿岸への境界域をまたぐ移住と生活、労働の実態、②当該境界域における朝鮮総督府・国 ・自治体による対朝鮮人政策、③島嶼社会との生活空間での接触、④移住朝鮮人による、当該地域での社会形成や当該境域内外をまたぐネットワークの形成、民族・労働運動の展開、の4 点に着目した研究である。 2019年度は、長崎・五島福江・福岡・佐賀・熊本に関連する歴史史料の調査を行なった。調査内容は自治体・警察・法務関係資料 ・GHQ 関係資料、各種社会団体の編纂誌、当該地域の郷土新聞、朝鮮人自身の手記・雑誌・新聞の調査・整理である。史料調査の場所は、長崎県立図書館、五島市立図書館、大村市歴史資料館、佐賀公文書館、佐賀県立図書館、福岡県立図書館、久留米市立図書館、熊本県立図書館所蔵の県の行政文書 ・市町村役場文書などの史料を中心に行なった。 とりわけ重要な成果が得られたのは、五島福江における戦時朝鮮人労働力動員に関する証言資料の収集、佐賀県立図書館における郷土新聞(『佐賀新聞』)、福岡県立図書館における郷土新聞(『福岡日日新聞』)、熊本県立図書館における郷土新聞(『九州日日新聞』)といった資料である。当該地域における朝鮮人の活動に関する史料を多く得ることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の当初の計画は、長崎・五島・壱岐、下関・岡山・宇和島に関連する歴史史料の調査を行うことであった。調査内容は自治体・警察・法務関係資料・ GHQ 関係資料、各種社会団体の編纂誌、当該地域の郷土新聞、朝鮮人自身の手記・雑誌・新聞の調査・整理である。史料調査の場所は、長崎県立図書館、五島市立図書館、壱岐市立郷ノ浦図書館、下関文書館・下関市立図書館、岡山市立図書館、宇和島市立図書館所蔵の県の行政文書・ 市町村役場文書などの史料を中心に行う予定であった。また、当該地域の在日本大韓民国民団、在日本朝鮮人総連合会とも協力し、関連資料の調査、証言の収集などを行っていく計画であった。 このなかで、長崎・五島に関してはおおむね資料状況を把握することができ、そのうえで2020年度に行う予定であった佐賀と福岡の史料調査を先験的に行うことが出来た。さらに玄界灘をめぐる朝鮮人の移動・生活について把握する過程で、熊本・天草の研究が必要になるとの視点から熊本の調査を行った。 しかし、思惑通りに行かなかった点もあった。市町村役場文書が多く存在する岡山市立図書館での調査が、新型コロナウィルス感染症問題によって延期せざるを得なくなった点である。本研究の史料上の核となるものでもあるため、2020年度以降も最優先の課題としておきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度においては、2019年度に中止せざるを得なかった岡山市立図書館における町村役場文書の史料調査を優先して行い、その後、韓国南部の沿岸・島嶼に関連する歴史史料の調査を行う(4泊5日)予定である。前者に関しては、3泊4日を予定しており、同時に広島県福山市歴史資料室に所蔵されている市町村役場関連の文書についても調査を行う予定である。後者については、釜山、巨済島、済州島の図書館、歴史博物館・資料館を中心に史料調査を行うとともに、関連地域の巡検踏査を行う。 さらに、研究が2年目に入ったことを鑑み、資料収集から考証へと研究を進め、その成果を報告する会を年2度設ける予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由はたった一つ新型コロナウィルス感染症の影響である。3月に予定していた岡山での資料調査がこれにより実現できなくなってしまったのである。次年度使用額も、この岡山での資料調査に使用する計画である。
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Research Products
(11 results)