2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K00952
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川合 康 大阪大学, 文学研究科, 教授 (40195037)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市澤 哲 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (30251862)
高橋 典幸 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (10292799)
下村 周太郎 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (40581822)
栗山 圭子 神戸女学院大学, 文学部, 准教授 (40755732)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 天野山金剛寺 / 長野荘 / 阿観 / 八条院 / 源貞弘 / 鎌倉幕府 / 光厳院 / 楠木正成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、河内国金剛寺に伝わる約350点に及ぶ中世古文書を詳しく調査・検討することを通して、Ⅰ平安時代末期~鎌倉時代中期、Ⅱ鎌倉時代後期~南北朝内乱期前半、Ⅲ南北朝内乱期後半~戦国時代という三段階における、金剛寺と南河内の地域社会の実態を解明するとともに、Ⅳ寺内法と武家権力、Ⅴ金剛寺院主職と貴族社会、という寺内・地域社会と中央権力との関係を明らかにしようとするものである。 初年度の令和元年度は、金剛寺に所蔵される中世古文書のうち、軸装になっているものが多いⅠ・Ⅱの時期を中心に、9月13日・14日と11月30日・12月1日の4日間、金剛寺客殿において古文書の熟覧・調査を行うとともに、専門業者による高精密デジタル画像撮影を行った。調査・撮影を行った文書数は177点であり、1点ずつの古文書の実状を記録し、『大日本古文書』『河内長野市史 史料編』と形状が異なる場合は、その旨を注記した「金剛寺文書撮影目録」を作成した。 また、9月13日と11月30日の調査終了後に、河内長野荘・紀伊見荘において金剛寺文書研究会を開催し、田村亨(研究協力者)が「南北両朝関係に関する一考察 ―「天野殿」を中心として―」、川合康(研究代表者)が「平安末期・鎌倉初期の金剛寺文書について」の報告を行った。本研究会によって、金剛寺文書のなかで最も時代的に古い養和2年2月22日「源貞弘田地施入置文」が2通同筆のものが金剛寺に伝来している理由や、南北朝時代に金剛寺に滞在した「天野殿」光厳院の政務の在り方について、共同研究者のなかで共通理解を得ることができた。なお、本研究会には河内長野市教育委員会の職員も参加した。 本年度撮影を行った177点の文書のデジタル画像データについては、共同研究者が共有して検討を進めるとともに、広く研究の進展に資するため、必要な手続きを経て、河内長野市立図書館において3月より公開を始めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の令和元年度は、金剛寺に所蔵される中世古文書のうち、軸装になっているものを優先的に選び、15軸、文書数で177点の原本調査を行った。予定よりも多くの文書調査が終了しており、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。高精密デジタル画像撮影では、軸装の題僉や文書の表だけではなく、端裏書や裏花押も対象とし、全311カットを撮影した。 軸装されている文書の多くは、Ⅰ平安時代末期~鎌倉時代中期、Ⅱ鎌倉時代後期~南北朝内乱期前半の時期のもので、重要文化財「楠木氏文書」をはじめ、金剛寺文書のなかでも著名なものが多い。これらの文書が、どの軸に所収されているのかを明確化するために、軸装ごとに番号、所収文書1点ずつに枝番を付け、それと画像番号を対応させた「金剛寺文書撮影目録」を作成した。戦前に刊行された『大日本古文書』や、1970年代に刊行された『河内長野市史 史料編』編纂時と状態が異なる文書については、その旨を備考欄に注記した。本目録は、金剛寺文書の現状を示す唯一の目録であり、令和2年度も、本研究の調査・撮影の進捗状況に合わせて、目録を更新していく予定である。 また、撮影画像については、広く市民や研究者の調査・研究に役立てるために、大阪大学と天野山金剛寺・河内長野市立図書館との間で資料特別利用許可申請の手続きを交わしたうえで、本年3月から河内長野市立図書館内で画像の公開を始めている。 本研究では、共同研究者が一堂に会する金剛寺文書研究会を組織し、令和元年度は9月13日と11月30日に研究会を開催し、田村亨(研究協力者)と川合康(研究代表者)が報告を行った。報告・討論を通じて、平安時代末期・鎌倉時代初期の金剛寺文書の特徴や、南北朝時代に金剛寺が置かれた政治的環境について、知見を深めることができた。次年度も金剛寺文書研究会を継続して開催し、本研究を進展させていく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度である令和元年度の調査は、金剛寺に所蔵される中世古文書のうち、軸装文書を優先的に選び、15軸に所収されている177点の文書原本の熟覧・調査・撮影を行った。現時点で金剛寺宝物館には25軸の軸装文書があることが確認できており、令和2年度の1回目の調査(9月5日・6日を予定)では、残り10軸の調査・撮影を終了させることにしたい。 令和2年度の2回目の調査からは、100点以上存在すると思われる中世の一紙文書の撮影を行う予定であるが、一紙文書の場合は、1点ずつの撮影に時間がかかるうえに、どの文書から順番に撮影を進めていくのかについて、事前の検討が必要となる。そのため、2回目の調査(11月27日・28日・29日を予定)からは、金剛寺をはじめ関係機関の了承を得て3日間の調査を行うこととし、初日を、撮影文書の選択と、『大日本古文書』『河内長野市史 史料編』所収の有無を確認する事前調査日にすることとした。 原文書の熟覧・調査・撮影が終了したものについては、今年度と同様に「金剛寺文書撮影目録」に必要な情報を書き込んでいくこととし、目録を更新していきたい。「金剛寺文書撮影目録」は本研究の最終年度に冊子体の報告書にまとめる計画である。また、河内長野市立図書館で公開する画像データも、調査・撮影の進捗状況に合わせて追加していく予定である。 金剛寺文書研究会については、今後は、Ⅱ鎌倉時代後期~南北朝内乱期前半、Ⅲ南北朝内乱期後半~戦国時代の文書が主な調査対象となることから、中世後期の研究報告を設定するとともに、Ⅳ寺内法と武家権力、Ⅴ金剛寺院主職と貴族社会という観点からも共同研究を進め、今年度の研究成果と合わせて、学会誌などに論文として発表していきたい。
|
Causes of Carryover |
研究分担者の市澤哲氏は、南北朝期の金剛寺の置かれた宗教的・政治的環境を研究する役割を担っているが、そのためには、金剛寺とならんで南朝祈願寺となった観心寺とその周辺、および金剛寺と関係を有した政治勢力である楠木氏の故地のフィールドワークが必要であり、今年度その実施を計画していた。計画では観心寺(河内長野市)、建水分神社(南河内郡千早赤阪村)の2カ所を中心にフィールドワークを行う予定であった。しかし、フィールドワークを実施しようとした時期に、大阪府でもCOVID-19が流行したため、今年度の実施は見送らざるをえなかった。当該フィールドワークは、本研究にとっては必要不可欠であるので、次年度にあらためて市澤氏が今年度と同様の計画で実施する予定である。
|
Remarks |
講演 川合康「河内国金剛寺の発展と河内長野」(河内長野市日本遺産推進協議会主催、神戸市教育会館、2019年12月21日) 講演 下村周太郎「栄山寺の歴史と古文書」(市立五條文化博物館主催、市立五條文化博物館、2019年11月24日)
|
Research Products
(10 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Book] 皇位継承2019
Author(s)
春名宏昭、高橋典幸、村和明、西川誠
Total Pages
128
Publisher
山川出版社
ISBN
978-4-634-59118-9
-