2020 Fiscal Year Research-status Report
戦乱から平和・安定への転換に関する比較地域史研究―九州を中心に
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19K00955
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
木村 直樹 長崎大学, 多文化社会学部, 教授 (40323662)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧原 成征 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (20375520)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 江戸藩邸 / 長崎 / 都市支配 / 蔵屋敷 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、4年間に及ぶ研究の2年目にあたり、2019年度行った佐賀や長崎の調査を踏まえ、本格的に九州北部の調査を行う予定であったが、コロナ禍のため、調査がほとんど行えなかった。 そのため、代表者と分担者の間で適宜オンライン会議を開きながら議論を深め、昨年度調査撮影した史料や、オンラインで原本画像が公開されている史料の分析を中心に研究を行った。 代表者は、17世紀半ばの長崎の都市の諸相について、国立公文書館所蔵「長崎御役所留」や長崎歴史文化博物館収蔵の長崎恵美須町の記録「寛宝日記」などの史料、また長崎の旧市街地のフィールドワークを通じて、転換の特質を検討した。17世紀半ば、町割や行政の仕組みが再編され、戦国末からある町と1620年前後から立ち上がる新興の町との間に存在した地子など役負担の有無や、貿易手数料の権利の不平等な状況などの解消が図られたことは様々な局面で史料的に明らかになっている。同時に奉行所をはじめとする諸施設や九州諸藩の蔵屋敷の拡張移転、都市住民の構成の変化など、都市の空間構造や奉行所の体制への変化についても連動して理解する必要があることが確認できた。これらの成果の一部は、2021年度に公刊される論文で公表する予定となっている。 また、分担者は、 東京大学史料編纂所所蔵の宗家史料「江戸藩邸毎日記」の17世紀の部分の検討を行った。まず江戸屋敷の管理をめぐる町人・百姓との関係を検討した。さらに江戸詰家臣団について、国許から勤番と江戸採用の者と関係を明らかにした。そうじて江戸に不慣れな対馬の勤番武士団が、江戸の社会に拘束されながら、他家や町人らと共存する方法をいかに模索したかを検討した。 さらに、佐賀藩・大村藩の藩領について、領主史料と地方史料との関連性と、軍事動員などにおける領主と支配領域の民衆との関係についても分析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来の計画では2年目に大規模な調査を実施する予定であったが、それが不可能であったため、すでに調査した史料や公開されている史料の分析にとどまった。そのため、より深い論点を得るための追加調査ができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、調査予定地での調査が、どの程度可能になるのか、慎重に状況を確認しながら計画を進めたい。同時に、現在ある史料の分析を進めている。今後、研究計画の延長も視野にいれて対応していきたい。
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Causes of Carryover |
2020年度に予定していた、調査及び入力などの人件費執行ができなかったため、次年度使用額が生じた。2021年度後半に調査を行うと同時に、2020年度は謝金などの形でデータ整理を行い執行を進めていきたい。
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