2023 Fiscal Year Annual Research Report
薩摩・琉球における境界領域の身分制に関する包括的研究
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19K00958
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Research Institution | Okinawa Prefectural University of Arts |
Principal Investigator |
山田 浩世 沖縄県立芸術大学, 音楽学部, 准教授 (00626046)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高江洲 昌哉 神奈川大学, 国際日本学部, 非常勤講師 (10449366)
畑山 周平 東京大学, 史料編纂所, 助教 (30710503)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 身分制 / 琉球 / 奄美 / 境界領域 / 家譜 / 鹿児島 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、系持ちと無系という公的に編纂された『家譜』の所持を基準とする琉球における身分制の形成(中世から近世)、変容(近世)、解体と継承(近世から近代)にかかる問題が、日本・中国の境界領域である琉球社会の特質を踏まえて検討することを目的としている。 研究対象地域において身分制を象徴するものとして各家の記録を編纂した『家譜』が存在している。『家譜』は自らの一族の出自や功績、社会との関係性を表明するものであるとともに、そのことから社会的な身分をそれぞれの時代・地域でどのように捉えていたのかを明瞭に示す材料となっている。このような『家譜』の特徴を踏まえながら、人びとが行き交い、また社会のあり方が他地域から大きく影響を受けていた境界領域間でどのような身分制への思考やあり方が展開したのかについて、初年度より合同での史料調査等を実施してきた。ただし2~4年度にかけて新型コロナウイルス感染症の流行などにより、当初予定していた調査の実施が困難となったことから、鹿児島・奄美・沖縄間の近世期における「家譜」編纂と由緒の選択にかかる問題が奄美地域で特徴的に見られることから、奄美諸島調査を集中的に実施した。 家譜を編纂する契機や家筋の記載論理などとともに、その形式などを合同調査などにより整理する中で、琉球(和系格・唐系格)・薩摩(和系格)の家譜編成の論理を由緒に基づきながら奄美地域で利用されていたことを確認した。また、これら身分意識の選択・形成は中世期における出自・経緯をもとにしながらも、近世的な論理と接続し創出されており、このことは近代日本の治下にあっても必要に応じて再度の選択を可能とさせていた。境界領域という複数の秩序がせめぎ合う中で、帰属意識とも結びつき由緒が選択的に形成される特徴を有していた。
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