2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K00968
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
樋口 雄彦 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (60342606)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 旗本 / 明治維新 / 戊辰戦争 / 土着 / 知行所 / 伊豆国 / 農兵 |
Outline of Annual Research Achievements |
伊豆国田方郡牧之郷村(現静岡県伊豆市)の豪農であり、旗本松下氏の家臣でもあった飯田家文書の整理作業(1点毎の封筒入れ、それらの文書保存箱への収納)を継続的に行うことにより、徳川幕府瓦解後の旗本土着の実態と戊辰戦争への関与、維新期における知行所の領民との関係性、領主制解体への動向などについて、従来未整理・未公開だった文書の把握が進捗した。飯田家文書の整理には協力者1名が参加するとともに、目録入力作業には所蔵者が従事してくれている。一部の資料については撮影も行い、その画像をもとに解読を実施し、内容面での理解をより深めることもできた。当該時期、すなわち幕末から明治初年の基本的な事実関係を把握する上で、幕末・明治期の当主であった飯田守年が書き残した日記に目を通すことができたのは、領主側と地域側との双方を見渡すために大きな助けとなった。なお、解読を進めた飯田家文書以外に、東京都公文書館などに所蔵される土着旗本に関わる文書なども参考にした上で、研究上の成果や新たな課題として確認できたのは、以下の諸点である。 1 知行所への土着とそこでの農兵取り立ての詳細ないきさつ、および新政府帰順時における、松下家親類である山内家を介した土佐藩の関与 2 近隣に土着した他の旗本らとともに「官軍」に加わり、旧幕府脱走軍と戦った箱根戦争の詳細とそれに関する諸記録の作成にいたる経緯 3 朝臣としての身分獲得と版籍奉還にともなう知行権喪失の過程、そして領民との葛藤や妥協、家臣団解体の諸相 4 家臣であるとともに知行所の有力農民であり、かつ国学の家でもあった飯田家と領主松下氏との間にみられる維新期特有の関係性
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、資料所蔵者および協力者の理解と協力を得て、毎月1回もしくは2回ほどのペースで資料所蔵者宅に出張し、資料の整理・撮影・解読などの作業を進めることがスムーズにできている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで進めてきた資料の整理を進めるとともに、必要な資料の撮影と解読にさらに取り組む。ただし、今後も継続して整理すべき資料の全体像が正確につかめていないため、いつまでに作業を終了させることができるのかは不透明である。とりわけ、今後の作業においては整理対象が、近現代文書の比重が高くなる可能性があり、その分量によっては難航することが予想される。資料所蔵者および協力者の力を得つつ、可能な限り全資料の整理をめざしたい。
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Causes of Carryover |
当初、資料調査の協力者1名に対する謝金の支出を想定していたところ、協力者から謝金の受け取り辞退を申し出られたたため、その分の支出がなくなった。
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Research Products
(1 results)