2020 Fiscal Year Research-status Report
秋田藩における藩士の土地開発と本知高編入に関する研究
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19K00971
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
渡辺 英夫 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (20191786)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 太閤検地 / 由利領検地 / 村替 / 当高 / 半物成 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の研究成果である「元和8年、由利領北端百三段地域の秋田領編入について」(「秋大史学」66号)を基に、2020年度は、秋田藩が常陸国から出羽に移封して新領国の統治を始める近世初頭、「当高」あるいは「六つ成高」といわれる秋田藩特有の高把握方式を整備していく過程について考察を深めた。 元和9年(1623)、秋田藩初代藩主佐竹義宣の甥に当たる岩城吉隆は、幕府より由利領亀田に2万石を与えられて藩政を開始する。その際に、その新領地から年貢を徴収するだけでなく、家臣に知行を安堵し岩城家臣団を編制する上でも不可欠だったのが検地だった。実は、この亀田領検地は寛永2年(1625)、伯父佐竹義宣の指示のもと、秋田藩士によってなされたのだった。そこでは、岩城氏が入部する以前、由利領を治めていた山形藩最上氏による「半物成」、「五つ取り」の高把握方式は採用されず、秋田藩がそれまでに自領でおこなっていた「六つ成り」の方式で検地が実施された。本研究では、この二つの検地方式の違いを分析し、そこから、秋田藩における高把握方式の独自性を展望できるようになった。しかし、2020年度は見通しにとどまり、研究成果としてまとめ公刊するには至らなかった。 だが現状では、仮題ながら、「佐竹氏入部前後の由利領北部地域」、「成立期亀田藩と本多正純大沢郷」および「本多正純の改易と秋田領村替一件」の3篇について、詳しく構想をまとめている。その第1論文では、由利領北部地域には佐竹氏が秋田氏から引き継いだ飛地領があったこと、次の第2論文では、幕府罪人として由利領の大沢郷に移された本多正純の扶持領1,000石が、秋田藩主佐竹義宣の手によって分解・再編されたこと、そして、第3論文では、由利領北端の百三段地域を秋田藩が自領に編入するのは、大沢郷の再編と、寛永2年(1625)亀田領検地を踏まえた結果であったことを明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究を申請した時点では、その意味も関連史料の存在も予測できていなかった「猿楽配当金」について、この2年間の研究により、『徳川実紀』を精査することによって詳しい意味を把握できるようになり、かつその関連史料が明治大学所蔵の内藤家文書にあることも突き止めることができた。 また、秋田藩領内では、藩領北部の大館給人家の文書の中に、土地開発と、その開発高を本知高に繰り入れたり、売買したりする史料が見つかったとの情報が大館郷土博物館より寄せられている。 しかしながら、コロナウイルス感染対策から勤務先大学より県外移動を厳しく制限され、 また、学内業務に忙殺されて史料調査を実施できていない状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
上記、研究実績の概要で述べた通り、2020年度の研究成果を公刊できるまで準備はできているので、その速やかな取りまとめを進めたい。 また、コロナウイルス感染状況を見極めながら、上記の新史料の実地調査をおこなって写真撮影し、その分析に進みたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により、当初計画した三重県および東京都への史料調査ができなかったことが最大の理由となる。また、同様の理由から、学生が大学への入校を禁止された期間が長く、かつ施設利用も制限されたことから、収集史資料を整理補助する予算を執行することもでかった。
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