2021 Fiscal Year Research-status Report
秋田藩における藩士の土地開発と本知高編入に関する研究
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19K00971
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
渡辺 英夫 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (20191786)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 太閤検地 / 由利領検地 / 村替 / 当高 / 半物成 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に予測したとおり「佐竹氏入部前後の由利領北部地域」(秋田大学史学会「秋大史学」67号)を公刊し、次の諸点を明らかにすることができた。 ①慶長7年(1602)、常陸より秋田に移封した佐竹氏は、山形藩最上氏の領地となった由利領内にかつて秋田氏が実質的に支配した太閤蔵入地を飛地として引き継いだ。②元和8年(1622)、最上氏の改易に連動して、幕府罪人本多正純の扶持料となった大沢郷は、当初由利領に属していたが、正保4年(1647)の出羽国絵図で由利領から分離されて山本郡となり、寛文印知で山本郡は仙北郡と改められた。③慶長17年(1612)、最上氏が実施した由利領検地は指出ながら「半物成」「五ツ取」を基本とする近世的な検地で、年貢の基本を定めて家臣の恣意性を排除し、高に基づく家臣団編成を確立した。④最上氏の慶長17年検地で確認できる由利領羽川郷の周辺を検証すると、その南方に位置した名ヶ沢と君ヶ野の二ヶ村、および北隣に位置する桂根村は検地帳にその名を確認できず、これら三ヶ村は佐竹氏が秋田氏から引き継いだ太閤蔵入地の由利領飛地だったことが明らかとなった。⑤「梅津政景日記」から、人返し事例を分析すると、最上氏支配下の由利領と佐竹氏支配の秋田藩領では、領民が相互に日常的な交流域を形成していた様子が窺える。 これにより、秋田藩佐竹氏が村替方式により由利領北端に位置する百三段三ヶ村を自領に編入した経緯と、それと交換に秋田藩が差し出したと思われる大沢郷の有り様を分析する前提が用意された。次のステップでは、交換された相互の村高を詳しく検証することにより、秋田藩独自の高把握方式と、それに基づいて家臣団が開発した新開地を本知高に編入する方式について解明していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年の計画では、「佐竹氏入部前後の由利領北部地域」、「成立期亀田藩と本多正純大沢郷」および「本多正純の改易と秋田領村替一件」の3編をまとめる予定だった。だが、新型コロナウイルスの感染拡大から、さらなる史料調査を実施することができず、収集史料の整理などに学生アルバイトの協力を得ることもできなかった。そのため、結果として最初の1編を公刊するに留まった。 ただし、コロナ禍のなか明治大学博物館所蔵「内藤家文書」の調査を実施し、大名領知高を検討する上で重要な「猿楽配当金」に関する史料を写真撮影することができた。これにより、寛文印知以前、幕府が佐竹氏の領知高を実質的にどう把握していたか、この点を検証する展望を持つことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
内藤家文書調査とは別に、藩領北部に位置した大館地方で史料調査を実施し、大館市郷土博物館の協力を得て新たに陪臣下遠家の文書を写真撮影することができた。これにより、陪臣の土地開発とそれを本知高に編入する方式や、土地経営の実際と田畑の質入れや売買に関して、具体的に検討することができるようになった。 これを踏まえ、これまでの由利領での事例に加えて、大館地域での検証も可能となり、本研究最終年度では、研究課題である藩士の土地開発とその本知高編入の問題について追求していきたい。そしてその成果を、これまで予定していた2編に反映させるとともに、さらには「下遠家文書に見る佐竹西家陪臣の土地開発と経営につい(仮題)」と題する考察もまとめたい。
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Causes of Carryover |
当初計画では、関連史料を得るため、数次にわたる現地調査と史料収集活動を実施する予定であったが、コロナウイルスの感拡大により、勤務先大学より県外移動を制限され、十分な現地史料調査を実施できなかったため、次年度使用限度額が発生した。 今後、コロナウイルスの感染状況を見極めながら、現地史料調査を実施して旅費を執行し、あわせて学生アルバイトの協力を得て収集した史料の整理のための予算も使いたい。
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Research Products
(1 results)