2023 Fiscal Year Annual Research Report
秋田藩における藩士の土地開発と本知高編入に関する研究
Project/Area Number |
19K00971
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
渡辺 英夫 秋田大学, 名誉教授, 名誉教授 (20191786)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 地方知行制 / 高売買 / 佐竹西家 / 小場家 / 越高 / 売高 |
Outline of Annual Research Achievements |
大館城代を勤めた佐竹西家・小場氏の文書が秋田県公文書館に所蔵されており、藩の直臣で大館給人の中田家文書は国文学研究資料館に所蔵されている。それに加え、本研究では大館市郷土博物館の協力により、大館給人鈴木家文書や小場家の家中で藩の陪臣に当たる下遠家や小高根家の文書、さらには大館町の枝郷二ツ屋村文書、そして早口村肝煎の高坂家文書など数多くの史料群を調査し、分析すことができた。 大館城代小場家では、家中の者たちがどこの村にどれだけの高を所持したのか、「村割り」「百姓付け」といって、耕地の1筆ごとにその耕作農民ともどもセットで把握していた。自家の資金と労力によって禄高を増やした秋田藩の武士たちは、給人も陪臣も自家の知行土地を支配し、所持する観念が強かった。彼らは新開地の1筆ごとに藩役人の検査を受け、ある程度開発高がまとまると、給人は藩に申請して藩主から、陪臣はその主から新たな知行安堵状を受け取った。これを給人の場合「知行御判紙」、あるいは単に「御判紙」といい、小場家家中の場合、「御証拠」といった。 こうした制度のもとで、秋田藩の武士は給人も陪臣も、他者が開発した土地を買い取って自らの禄高に編入したり、自己の禄高の一部を質入れして金策したりすることがあった。大館給人中田家では、藩の足軽が開発した高を買い取って自家の禄高に加えているし、小場家家中の場合、「越高」といって自家の禄高を他の小場家家中に質入れする事態が明らかになった。大館地方には、質地請け戻し慣行があって、約束の年限以内に借入金を返済すれば、その土地は元の持ち主に返還されたが、中には返済できずに質流れとなる土地もあった。一小場家の家中同士で実質的な田畑の売買が繰り返されていたのである。小場家ではこうした土地売買を禄高の売り買いと認識し、「売高」とよんでいる。
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