2020 Fiscal Year Research-status Report
日本古代の「移民」と国家・文化の形成―前近代東アジアの人の移動と定住のなかで―
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19K00979
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
丸山 裕美子 愛知県立大学, 日本文化学部, 教授 (00315863)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日本古代史 / 移民 / 正倉院文書 / 墓誌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本古代国家・文化の形成に「渡来人」「帰化人」が果たした役割を、「移民」あるいは「東アジアの人の移動・移住・定着」という視点で捉え直 し、新出史料の分析を行って、再検討しようとするものである。前近代東アジア世界において、日本の古代社会が「移民」をどう受け入れたのか、また「移民」 がどのように日本に同化したのかを明らかにすることを目指す。本年度の研究実績は以下の通りである。 ①正倉院文書の写経所文書に見える「移民」について、天平から宝亀年間について、すべてを抽出する作業を行い、5世紀以来の移民の子孫と、百済・高句麗遺民(移民)の子孫を把握した上で、その動向を分析し、成果を「古代の移民と奈良時代の文化―東大寺写経所の百済・高句麗移民―」として、史学会シンポジウム叢書『日本古代律令制と中国文明』(山川出版社)に発表した。 ②近年、中国で多く出土している高句麗・百済移民の墓誌について、昨年度に引き続き、史料の蒐集を行い、東アジア世界における人の移動・移住・定着の様相を整理した。 ③関連して、日本古代の文書様式について、東アジア古文書学という視点での考察を行い、成果を『国立歴史民俗博物館研究報告』224号に「円珍の位記・智証大師諡号勅書と唐の告身」として発表した。また『本草和名』写本の翻刻と分析を行い、東アジアにおける本草文化の受容について考察した。成果は2021年8月に刊行予定である。日中文化交流史叢書に医書の交流についての論文も執筆した(入稿済)。いずれも日本古代国家の文化の形成に関わる研究成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は予定していた論文を執筆し、成果をまとめることができたので、その点はおおむね予定通りに進展した。ただし、新型コロナウィルスの感染拡大により、移動が制限されるなか、国内・国外の調査出張ができなくなっているのが問題である。可能であれば、今年度は中国・台湾にも調査に行きたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
①これまでに蒐集した中国出土の百済・高句麗遺民(移民)の墓誌を分析し、論文にまとめたいと考えている。可能であれば、中国に調査に行きたいと考えているが、現状では困難であるかもしれない。 ②「移民」が古代国家の文化の形成に果たした役割についての研究成果をまとめるとともに、その歴史的な画期となった7世紀後半の国家と文化について、一般向けの書で概説する。 ③その他、日本古代の医療技術や医学知識に関して、「移民」が果たした役割を含めた概説書を、研究成果の一環として、執筆する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、国内調査、国外調査とも行うことが不可能な状況であったため、旅費の執行がほとんどできなかった。可能であれば、翌年度は国内・国外調査を積極的に行いたい。また研究協力者として予定していた中国からの留学生が、やはりコロナ禍により入国できなかったため、謝金の執行も予定通りには行えなかった。留学生は昨年度末に入国できたので、今年度は協力をあおぐ予定である。
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Research Products
(2 results)